研究課題/領域番号 |
25702029
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
荏原 充宏 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (10452393)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 早期診断 / スマートポリマー / 感染症 / 温度応答性 |
研究概要 |
現在、世界70億人のうち、1/2は衛生面で問題を抱え、1/3は電気が使えず、1/5がまともな水が飲めない環境で生活しているといわれている。こうした地域では、毎年1000万人以上が5歳まで生きられずに死亡しており、その死因の半分以上が早期に適切な診断・治療を受ければ助かるようなepidemics(マラリア、結核、インフルエンザなどの疫病)である。こうした背景のもと、本研究では、安定した電気供給や清潔な飲料水などの入手が困難な低インフラ地域(途上国や被災地)などでも利用可能なエネルギー源(例えば摩擦熱や太陽光など)によって駆動する環境応答性ポリマーを用いた早期診断システムの開発を行う。特に、5歳以下の子供が犠牲となりやすいマラリヤやインフルエンザといった感染症バイオマーカーの感染初期の微量濃度(ng/mL)を、ポイント・オブ・ケア(POC)診断で検出可能なレベル(ug/mL)まで濃縮することを最終目的とする。平成25年度には、抗原抗体反応後にポリマーの修飾を行うため、シクロオクチンとアジド基のクリック反応を用いた。この反応は他のトリアゾール環を形成させるクリック反応とは異なり、金属触媒を必要とせず、シュタウディンガー反応よりも100倍以上も反応効率が良いことが知られている。すなわち、シクロオクチンを側鎖に有する温度応答性ポリマーを用いることで、汚染水や夾雑物存在下でもアジド化抗体との反応が進むものと期待できる。その結果、水道水、泥水、尿、血清などの溶液の中でもポリマー修飾が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の一つの山となるのが、なるべく特殊な条件を用いずにポリマーと抗体を反応させることであったが、研究計画通りにシクロオクチンを側鎖に有する温度応答性ポリマーを合成することに成功した。さらにこれらの反応は、汚染水や夾雑物存在下でも行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、合成したシクロオクチン化温度応答性ポリマーを用いて、イムノクロマト用のニトロセルロース膜上でのアジド化抗体との反応を行う。この際、毛細管現象による流速、ポリマーおよび抗体の濃度、温度(室温・体温)が反応効率に与える影響について詳細に検討する。ニトロセルロース膜上で反応させた抗体―ポリマー複合体を、相転移温度以上で凝集させる。理想的にはサンプル温度(体温)によって濃縮されることが望ましいが、もしサンプル温度が相転移温度以下になってしまった場合は、外部から温めることで凝集させる。この際、流速、濃度、温度(室温・体温)が濃縮効率に与える影響について詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画はおおむね順調に進んだが、使用する抗体の選択する際に、最適なものを購入するのに基礎検討が必要となったため、一部の抗体やイムノアッセイキットなどの購入予定が次年度にずれこんでしまった。 前年度までに行った基礎検討に基づき、抗体やイムノアッセイのキットを購入する。
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