研究課題/領域番号 |
25702030
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
都 英次郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (70443231)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 光発熱特性 / 近赤外光 |
研究概要 |
近年の細胞研究の発展はめざましく、特に光を活用した細胞機能制御技術に注目が集まっている。しかし、従来技術は、生体透過性の低い光を利用するため生体深部領域の細胞機能を制御することはできない。また、安全性の低いウイルスを用いて遺伝子改変を行う必要がある。従って、本研究目的では、生体透過性の高い近赤外光により容易に発熱するナノカーボンの光発熱機能を活用することで、遺伝子改変なしに、生体深部の細胞機能をナノメーターレベルで光により制御する技術を構築する。本研究は、根治不可能といわれるパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患やガンに対する新しい分子標的医薬や先進医療技術のための普遍的な技術となる。本研究目的を達成するために本年度は、光熱機能化ナノカーボン複合体の合成を行った。具体的には以下の通りである。ナノカーボンの光発熱特性を高めるために近赤外光を効率的に吸収可能な有機色素分子をナノカーボン表面に共有結合させた。また、当初の予定では、水溶性タンパク質をナノカーボン表面に非共有結合的に吸着させる予定であったが、水溶性タンパク質を使用せずとも有機色素分子のみでナノカーボンを水中に分散させることに成功した。当該ナノカーボン複合体の光吸収性、分散性、ナノ構造などの物性解析を行った。さらに、ナノカーボン複合体の光発熱特性を調べるために、当該分散液に近赤外レーザー光線を照射し、熱電対により経時的な温度変化を測定した。コントロール実験として未機能化ナノカーボンの光発熱特性評価を行い、光機能性の改良具合を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究目標に掲げた光熱機能化ナノカーボン複合体の合成を達成しているだけでなく、本研究で開発するコア技術に関わる論文がハイインパクトな海外一流誌(ACS Nano)に掲載されたことは、当初の予想を上回る大きな成果と言える。さらに、本成果はアメリカ化学会によりプレスリリースされ、インターネットを中心に国内外で広く報道された。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、合成したナノカーボン複合体を活用した細胞機能制御技術の開発を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
作製法の異なるCNTや種類の異なるCNTの光発熱特性も併せて調査する予定であったが、一部のCNTの合成に時間を要しているため、計画を変更し、数種類のナノカーボンのみの調査と解析を行うこととした。 作製法の異なるCNTや種類の異なるCNTの購入経費や合成に関わる消耗品経費ならびにこれらのナノカーボンに対する光発熱特性に関わる調査経費に使用予定である。
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