研究課題
本研究の目的は、メカニカルストレスの過剰と減弱に起因する運動器障害の発生機序を解明することである。昨年度からの継続で、メカニカルストレスの減弱環境における関節軟骨の変性メカニズムをin vivoで調査した。マウス後肢非荷重モデルおよび膝関節固定モデルでは、関節軟骨の深層でRANKL陽性細胞が増加し、OPG陽性細胞が減少した。さらに、軟骨下骨の萎縮に伴い、骨髄腔が関節軟骨にまで拡がり、関節軟骨の下端に接触する骨面で、MMP13の局在と、強いTRAP活性が認められた。これらの結果から、減弱環境下では、軟骨細胞が軟骨下骨における破骨細胞の活性化に寄与し、さらに活性化した破骨細胞が関節軟骨を分解・吸収するという、関節軟骨と軟骨下骨の間の相互作用が存在することが示唆された。また、関節軟骨の非石灰化層で認められたプロテオグリカンの減少とALP活性の亢進は、関節軟骨の石灰化亢進を示唆し、tidemark advancementの引き金となる可能性が示された。これらの結果と、現在も進展中のメカニカルストレスの過剰環境の実験動物モデルから得られている結果を合わせると、メカニカルストレスの過剰と減弱ともに、関節軟骨の厚さの変化がみられ、軟骨基質の分解酵素が過剰に産生されるが、減弱環境では変形性関節症のような過剰環境で鍵となる軟骨細胞の肥大化がみられない。また、関節軟骨の変性と密接に関連する軟骨下骨において、過剰環境では脆弱化から骨硬化に移行する一方で、減弱環境では初期から一貫して破骨細胞の活性化により骨吸収が亢進し、高度な骨萎縮がみられる。廃用と過用は別の病態として扱われているが、メカニカルストレスを基軸とする共通の疾患と捉えることで、発症メカニズムのうち共通するものと異なるものの全体像が明らかになった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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