平成28年度は,前年度の構築したシステムをより福祉現場の状況に適合するように改善し,その利便性の向上につとめた. (1)眼電・筋電によるロボットアーム制御システム 対象者を頭部のみ随意的に動作することが可能な麻痺患者と仮定し,実用的なシステムの構築を試みた.まず,対象者は寝返りなどの動作も困難であるため,顔周辺に装置を取付ける場合には安全性・安定性の確保が重要となる.そのため,3Dスキャナにより顔形状の3Dモデル化・編集を行い,3Dプリンタで造形するオードメイド電極取付用マスクを開発した.結果,目周辺の安全性の確保だけでなく,定位置に電極を貼付けることが可能となり,眼電信号の精度向上につながった.また,ロボットアーム制御用PCインターフェースソフトウェアも改善し,ディスポ電極5個で計測できる眼電・筋電信号により様々なマニュアル入力(上下左右の眼球動作から生じる眼電で8方向入力,随意的瞬きにより生じる眼電で1入力,眼電目視点推定でカーソルのような2次元位置入力,噛み締める時に生じる筋電の振幅値で比例値入力)を可能とした.その上で,ロボットアームの作業空間に上面カメラ・側面カメラ・正面カメラを取付け,カメラ画像処理に基づく物体認識を補助的に適用し,安定な物体操作を実現した. (2)頭皮脳波による移動ロボット制御システム 同様に対象者を頭部のみ随意的に動作することが可能な麻痺患者と仮定し,実用的なシステムの構築を目指した.まず前年度構築したSLAM(環境地図構築・自己位置推定・指定経路追従)の高精度・高速化,次に移動ロボット上に小型ロボットアーム・学習リモコンを搭載,扉/カーテン開閉やTV・エアコン操作などの環境制御機能の実現を試みた.また,リアルタイム事象関連電位P300解析ソフトウェアを構築し,P300スペラに基づく移動ロボットの操作性能を従来よりも30%高速化することに成功した.
|