研究課題/領域番号 |
25702037
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 拓 筑波大学, 体育系, 助教 (20643117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 普遍的初等教育の達成 / 文化に基づく教育制度 / 独自的なスポーツ発展形成 / 普及ロジックの解明 / 開発人類学的考察 / 開発途上国の体育事情 / 教育支援の土着化 / 体育科教育の変遷・史実 |
研究実績の概要 |
本研究では、小学校体育授業の全国的な普及に向けてカンボジア王国が示す政策の実行可能性を科学的に検証し、持続可能な発展形成の実証研究を目的としている。 4年計画の2年目にあたる本年度は、「普及ロジックモデルの課題解明」を目的とした基盤研究として教育開発展開・衰退期(1953~1975年)における「カンボジア王国の小学校体育科教育の普及メカニズムの独自性に関する研究」を行った。 研究開始当初は、研究実施計画の段階を踏まえてカンボジアの教科教育および教科体育の歴史的展開に関する文献・参与観察を行い、研究成果をまとめた。カンボジアのスポーツ黄金期とされているシハヌーク政権下の教育史および体育・スポーツの歴史的・人類学的考察を深める中で、この時代に生じた状況変化に伴って、教育および体育・スポーツの実施体制および普及方略が現代に大きく影響している史実が判明した。 また、1.このシハヌーク時代は、民主化を目指すサンクム前期(1953~1963年)と共産主義に移行したサンクム後期(1963~1975年)に分かれていた史実が判明した。2.サンクム前期には、体育・スポーツ省の設置に伴う王立体育スポーツ大学や三角ゲームズ(国体)の開始など、現存のスポーツ開発の基礎が築かれており、3.サンクム後期には、国際社会のイデオロギー闘争に巻き込まれる中で共産主義諸国からの支援に傾き、エリートスポーツの強化に専念し始めたことなどが明らかとなった。 現存する多くの制度がサンクム時代に形成されていたこと、自発的発展形成時に形作られた制度や他の正の遺産との関係性が判明したことなどから、本年度以降の研究では、本時代区分におけるカンボジアの教育および体育・スポーツ普及の独自性、行財政制度等を掘り下げて調査することで、カンボジア独自の普及方略の在り方を検証し、3年目以降の研究につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、現代に起る事象のみを検証することで普及ロジックモデルを解明しようと考えていたが、現代の教科体育に関する政策や体育史および開発人類学的検討を合わせて研究する必要が生じた。その上、研究を進める中でブラック・ボックスに隠されていた史実(独立後の混乱期において外発的助力を受け入れながらも、独自の思考に基づく制度や仕組みが現代に継承されている事実)が明らかになり、堀下げた研究を進める必要が高まったことから、研究がやや遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は 4年計画の2年目として、来年度以降の政策評価分析(H27年度)研究内容の選査・分析(H28年度)を目指してカンボジア王国の体育科教育の普及ロジックを完成させるための基盤研究を行った。 H25年度には、①教育開発導入期(1863~1953年)の検討から「普及ロジックの解明」を目的に「カンボジア王国の小学校体育科教育の普及メカニズムの独自モデルに関する研究」を行った。また、H26年度には、②教育開発展開・衰退期(1953~1975年)を調査し、カンボジアのスポーツ黄金期と称された時代の実際を検証する中で、人材育成制度の差異の解明に着手した。 そこでH27年度は、③教育開発崩壊・復興期(1975~1993年)を論文化し、④教育開発調整期(1993~2005年)と⑤教育開発成長期(2005~)[政策評価分析]を調査することで、最終年度に向けた研究を進める計画である。 また、H27年度の調査では、③教育開発崩壊・復興期(1975~1993年)の行財政制度・人財育成などを踏まえた調査を行い、教育政策と行財政制度の連鎖関係に関する調査を行う予定である。 なお、全体的な研究体制については、特異な発展を歩む近隣国の体育科教育の普及を概観しながら、ICSSPEやMINEPSといった国際関連資料の調査・分析、現地のUNESCOおよび世界銀行(教育担当)スタッフからの情報共有、または前職でつながりを得た協力者による現地調整などの助力を受けながら研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた人員の確保が遅れたために未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
データ処理のための謝金・人件費として執行すると共に、海外調査のためにも一部充てる予定である。
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