本研究課題に多いては、ガンやエイズ、慢性消耗性疾患の患者における不良予後の指標として知られるマイオペニア(骨格筋減弱症)の発症要因を解明し、最終的には骨格筋量/体脂肪量減少を特徴とした全身的な身体機能低下を防止する介入戦略の開発を目指して研究が行われた。特に平成28年度においては、具体的には以下の3つの研究課題を中心に詳細な研究活動を遂行した。 1) タンパク質合成の促進を介した骨格筋肥大制御機構の解明と筋萎縮耐性の獲得 2) マイオペニアを誘発する全身性および局所因子の探索とその機能解析 3) 身体運動による筋タンパク質代謝制御を基軸とした包括的マイオペニア予防戦略の開発 上記研究課題1) については、細胞内タンパク質合成の促進を制御する機能分子であるmechanistic target of rapamycin (mTOR) 経路に着目し、培養細胞および遺伝子改変動物を用いた解析を進めた。また課題2) については、マイオペニア症状を呈するモデル動物の骨格筋細胞において発現変動を示す遺伝子の網羅的発現解析を行い、さらには絞り込んだマイオペニア関連候補遺伝子の機能解析を行った。さらに課題3) については、マイオペニアの進行を防止する介入戦略として全身的な持久性運動を採用し、身体運動介入によるマイオペニア発症予防・進行防止の効果およびその機序の解明について、特に骨格筋タンパク質代謝のを中心に解析を行った。 これまで上記の研究課題については、平成28年度では原著論文1編および国際学会招待講演1件に加え、現在2編の論文が投稿準備/査読中となっている。
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