研究実績の概要 |
本研究では10年間の長期観察に基づき、動脈硬化度の加齢変化の個人差に対する遺伝的要因と後天的要因(身体活動水準)の影響を検討した。 2003~2005年に動脈スティフネス計測を行った成人90名(うち女性39名)を対象に、2013~2015年に再度動脈スティフネス計測を行うとともに、身体活動量を質問紙およびヒアリングにて調査した。被験者全員の初回参加時の年齢は52±14歳、フォローアップ期間は平均10±0.9年であった。動脈スティフネスの指標であるbaPWVは10年後に平均12%増大した(13.4±2.6 vs. 14.9±3.1m/s, P<0.0001)。有酸素性運動の実施状況に着目すると、15METs/週以上実施していた群のbaPWVの変化率は+5.4±9.9% にとどまっており、5METs/週未満および5~15METs/週の有酸素性運動実施群の変化率よりも著明に低値であった(それぞれ+13.2±10.6%、+13.7±11.3%)。有酸素性運動を習慣的に実施し続けることで、加齢に伴う動脈スティフネスの増大を抑制し得ることが、10年間の縦断的検討により明らかとなった。遺伝子多型の関与については、現在、解析を進めている。今後、遺伝子多型と日常の身体活動状況との相乗効果の検証を進める予定である。 190名(18-79歳)を対象に、加齢に伴う動脈硬化度増大の部位特異性および大動脈循環指標との関連性を検討したところ、近位大動脈が、最も著明な加齢変化を示し、かつ心血管疾患発症リスクである中心血圧との関連性も強いことが明らかとなった。これらの結果から、近位大動脈のスティフネス評価の重要性を示唆することが示唆された。
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