研究課題/領域番号 |
25702050
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
平山 祐 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (10600207)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / 蛍光イメージング / 鉄イオン |
研究概要 |
当該年度においてはプロトタイプである鉄(II)イオン蛍光プローブ分子RhoNox-1を基盤とし、(1)応答速度と蛍光応答コントラストの改善、(2)多波長への展開、(3)細胞内局在性の制御について検討した。 (1)応答速度と蛍光応答コントラストの改善:RhoNox-1は鉄(II)イオンに対して1時間で約30倍程度の蛍光応答を示す。生体内の鉄(II)イオンの挙動を可視化するにはさらに鋭敏に応答するものが必要であり、当該年度においては応答速度、応答コントラストの改善を目指した。具体的には、鉄(II)イオンとの反応部位であるN-オキシド近傍の立体障害とその電子状態を変化させたプローブ分子群を合成し、蛍光測定からイメージングに至るまで、鉄(II)イオン蛍光プローブ分子としての評価を行なった。その結果、30分以内に約50倍から100倍の蛍光増大比を示し、生細胞を用いた蛍光イメージング実験でもRhoNox-1に比較して優れた蛍光応答特性を有することが分かった。 (2)プローブ分子の多波長展開:RhoNox-1が橙色蛍光を示すローダミンを蛍光団としていたのに対し、青色蛍光を示すクマリン、および黄緑色蛍光を示すロドール骨格を蛍光団として有する鉄(II)イオン蛍光プローブ分子群の開発を実施した。クマリンタイプのものについては鉄(II)イオンに対し蛍光応答は示したものの水溶性が悪く、イメージングの実施には至っていないが、ロドールタイプについてはRhoNox-1と同等かそれ以上の蛍光応答を示し、生細胞内で良好に機能することを確認した。 (3)細胞内局在性制御:上記のプローブ分子を基盤として、各種細胞内局在部位を導入することでプローブ分子の細胞内局在を制御することを目指した。現在のところ、ミトコンドリア、リソソーム、および小胞体への局在化と各細胞内小器官における鉄(II)イオンの蛍光検出に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応効率の改善については当初期待していたものを上回る結果が得られている。また、多波長展開については、近赤外蛍光団と赤色蛍光団については未達成であるものの、N-オキシドによる鉄(II)イオン検出システムがロドールおよびクマリン骨格でも良好に作用することを確認でき、特にロドールタイプは生細胞内で機能するプローブを開発できた。細胞内局在制御についてはミトコンドリア、リソソーム、小胞体を標的にしたものの開発を達成しており、これは当初の予定通りである。以上の成果を総合的に判断して研究計画はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に確立した良好な応答性を示すプローブ分子の設計指針を基に、まずは多波長展開として水溶性の高いクマリン誘導体、赤色蛍光団、近赤外蛍光団を有する鉄(II)イオン蛍光プローブ分子の合成、および細胞内小器官局在性を持つプローブ分子の合成を実施し、これらを用いた鉄代謝機構の解明研究へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は概ね計画通りに進行しており、研究費についても当初の請求額の通りに執行することができている。年度末における無理な使い切りを避けた結果、端数としての809円が残り、次年度使用額へと繰り越すことになった。 繰り越した研究費は物品費として使用する予定である。
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