研究課題
当該年度においては、昨年度に引き続きプロトタイプである鉄(II)イオン蛍光プローブRhoNox-1の(1)多波長展開と細胞内局在制御および(2)近赤外蛍光プローブの開発、(3)鉄により活性化される分子の開発を実施した。(1)昨年度の青色蛍光のものに引き続き、緑色蛍光、深赤色蛍光を示す鉄(II)イオン蛍光プローブの開発に成功した。得られたプローブの中でも特に、深赤色蛍光プローブについては、RhoNox-1を超える応答速度・蛍光応答コントラストを示すことが分かった。さらにこれを使った細胞イメージングでは、低酸素領域における鉄(II)イオンの変動を可視化することに成功した。また、膜局在型プローブについては神経細胞におけるエンドサイトーシスをとらえることにも成功しており、様々な細胞種の鉄取り込み機構について検討中である。また、高感度プローブの開発にも成功し、内在性鉄(II)イオンを確実にとらえることができるようになった。現在、これを使用した新たな細胞内鉄動態研究を実施しているところである。(2)in vivoイメージングに利用可能な近赤外蛍光プローブの開発を実施した。蛍光波長が720 nmの近赤外蛍光プローブを開発したものの、細胞内での安定性に問題が有り、現在その改善について検討している。(3)鉄により活性化される分子として、Nオキシドと鉄(II)イオンによる酸化的脱アルキル化反応を利用した新たな分子を設計・合成した。本分子はアセトニトリル中で鉄(II)イオンを添加した際に活性化されることを見出した。今後、水溶液中でも機能するよう構造展開していく。
2: おおむね順調に進展している
多波長展開については青色から深赤色まで可視光領域すべてをカバーする蛍光プローブ群の開発に成功した。これらはすべて細胞イメージングに使用可能であり、そのうち深赤色のものについては微妙な細胞内鉄変動をとらえることができた。また、膜局在型プローブについてはその合成と細胞実験プロトコルが確立され、今後は細胞実験を残すのみである。近赤外蛍光プローブについても、ほぼ見通しがついたことから、今後その合成とin vivoイメージングへの展開を行なうのみである。以上の成果を総合的に判断し、概ね順調に進行していると判断した。
前年度までに確立した蛍光プローブ群を用い、様々な病態モデルにおける異常な鉄取り込み機構の解明を実施していく。また、膜局在型プローブについては神経細胞におけう鉄取り込み挙動の解明研究へと展開する予定である。また、近赤外蛍光プローブについては、720 nmの蛍光波長を示すものについてその構造安定化を行い、in vivoイメージングへと展開する。また、鉄により活性化される分子の開発については水溶液中での機能の確立と、さらなる構造展開により自由鉄イオンプールを可視化できるレベルに持っていく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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