研究課題
若手研究(A)
大脳基底核を構成する主要な脳領域である線条体は、非常に多くの神経核からの出入力系における中継核として、様々な行動機能を媒介している。我々は、線条体に入力する神経回路のうち、視床束傍核(parafascicular nucleus; PF)ニューロンからの投射経路が齧歯類(マウス)における視覚性弁別学習行動の獲得および実行機能重要な役割を持つことを明らかにした。本成果は、逆行性レンチウイルスベクターによる神経路選択的な遺伝子導入技術および特定のニューロンを誘導的に除去するイムノトキシン細胞標的法の組み合わせによるものであり、これらの技術を応用し今後は学習機能に関わる線条体機能を介した神経路を新たに見出し、神経路の除去のみでなく様々な神経機能制御技術を用いること神経機能を促進的に誘導制御を行うことも計画している。これにより、行動選択時に賢い行動を示すモデル動物の作出を目指している。25年度においては、視床外側中心核(central lateral nucleus; CL)ニューロンから線条体に投射する神経路をターゲットとして、逆行性ベクターによる遺伝子導入と神経路の除去実験を行い、組織化学的手法(免疫染色およびニッスル染色)によって、標的神経路(CL-線条体路)ニューロンのみを除去したモデル動物の作出に成功した。また、逆行性トレーサーによるCL-線条体路標識率を基準として、逆行性ベクターによる遺伝子導入効率を解析したところ、75%以上の効率で導入遺伝子とトレーサーが共染色されることを見出した。今後は、本経路を除去して基本的な運動能力測定実験、運動学習行動への影響を解析し、その後弁別学習(オペラント条件付け課題)による行動学的試験を行うことで、学習行動の正確性と反応時間に与える影響を分析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
逆行性レンチウイルスベクターによる特定神経路への遺伝子導入については、我々のグループで既に確立した技術であり本システムを用いた経路標識、経路除去の確認としての組織実験は予定通り順調に進展した。25年度においては、視床外側中心核(central lateral nucleus; CL)ニューロンから線条体に投射する神経路を標的とし本経路を高頻度に遺伝子標識したこと、また本経路の除去実験がスムーズに遂行された。これにより本モデル動物を用いて、26年度の実験計画は円滑に開始することが可能となった。
25年度の実験計画が順調に進展したことから、26年度においても予定通り、作出したモデル動物を用いて、順次以下の行動実験を行うことを計画している。・基本的な運動能力測定赤外線ビームセンサーを用いた運動量測定による自発運動量テスト、ローターロッド(回転運動測定テスト)を用いた運動学習獲得の解析・オペラント条件付け課題シャトルアボイダンステストを用いた受動的回避反応実験、光刺激後の2レバー弁別学習による回避行動や学習行動の正確性と反応時間に与える影響の解析これらの行動解析により、CL-線条体路がどのような行動機能を司るかを明らかにする。また、本計画で顕著な差が見出せない場合には、学習とは異なる課題(プレパルス抑制課題、高架式十字迷路課題など)を行い、多角的なアプローチからその機能的意義を探求する。
1. 旅費に関して、海外学会参加にかかる費用が所属大学の海外学術研究旅費事業により負担してもらうことができたため、大幅にその支出を抑えることができたこと。2. 技術員雇用における費用(交付申請書の人件費・謝金+その他の欄に記載)が想定していた額よりも少なく済んだため、実支出(収支決算報告書のその他の欄に記載)に対して余剰したため。26年度交付申請書に記載した分に加算して、物品費と旅費の支出に補填。
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