研究課題
様々な行動機能を媒介する線条体は、大脳皮質、視床からグルタミン酸性、黒質からドーパミン性の投射を受け、また出力の統合制御を行うことが知られている。線条体を中心に複雑に構成された神経回路がどのような行動機能を司るかを明らかにするため、特定の神経回路を遺伝子標識し、その回路の機能を選択的に制御する技術を開発することで、これまで視床束傍核 (parafascicular nucleus; PF)ニューロンから線条体に投射する視床-線条体路が学習行動の獲得と実行に重要な役割を果たすことを見出した。本研究では、PFと同じく視床を構成する髄板内核の1つである視床外側中心核 (central lateral nucleus; CL)から線条体に投射する神経回路がどのような行動機能を有するかを明らかにすることに取り組んでいる。28年度においては、CL-線条体経路機能を化学遺伝学による薬剤抑制を誘導する系で実験することで、これまでの破壊系と同様の結果が得られることの検証を行った。Cre組換え酵素によってCL-線条体路を標識し、次にCre依存的に薬剤に応答して神経機能の抑制を誘導するDREADD遺伝子を発現させたモデル動物を作出、これを用いて様々な行動課題を行なった。その結果、学習課題及び行動の柔軟性を調べる行動課題では、これまで破壊系で得られていた結果と同程度あるいはややマイルドな結果を示すことを見出した。このことから、神経回路機能を解析する方法として、選択的な神経路標識技術と破壊系を組み合わせた従来法のみでなく、化学遺伝学による抑制系がワークすることを明らかにした。今後は、実験系を促進系と組み合わせることで行動選択時に賢い行動を示すモデル動物の作出を目指す。
3: やや遅れている
CL-線条体路機能の行動評価として破壊系による結果のみでなく、抑制系による解析をeditor/reviewerに求められたため、急遽追加実験を行うこととなった。また、標的経路の破壊を電気生理的なデータで示す実験も追加したため、当初の予定よりも時間がかかっている。しかし、これらの実験はこれまでの結果を確固たるものとする補足データとなり、意義のある追加実験となった。
電気生理実験によるin vivoでの神経活動の抑制データを現在取得中であり、これがまとまれば本研究成果を学術誌に投稿することを予定している。
その他の項目に計上していた行動解析に用いる機器は、本研究室既存のもので代替できたため、新規購入の必要がなくなったから。旅費については、予定していた国内外出張が何件か変更となったため。人件費については、別予算からの支出を行なったため不必要となったから。研究計画を1年延長するにあたり、物品費がかかることが予想されるので、次年度使用額として繰越を考えていたため。
研究計画を1年延長したため、その際に必要な経費を余剰分から充てることを予定している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
Neurosci. Res.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.neures.2017.02.007
J Neural Transm.
10.1007/s00702-017-1681-3
10.1007/s00702-016-1674-7
Mol. Pain.
巻: 12 ページ: 1-11
Neurosci. Lett.
巻: 630 ページ: 45-52
10.1016/j.neulet.2016.07.020