平成28年度は主に、テクスチャ付き3Dデータの制作手法、携帯型端末での表示技術・配信手法の実証、今後の表示デバイスの可能性について検討を行なった。 テクスチャ付き3DデータはこれまでもPhotoscanを用いたデジタル写真測量で検証していたが、それを突き詰める形で大小の規模や素材の違い、スケールの調整方法、レーザー計測と比較した精度検証などを行なった。その結果様々な分野の文化財に適応した撮影方法や設定値がわかった。今後とも主力技術として実際の調査現場で実践的に使用していくことで、その確度を高めていく。 携帯型端末での開発、配信の流れは本研究ですでにAppleStoreでの配信などの実証を行ない、引き続き制作を継続しコンテンツ化を行なっていく予定となっている。しかしそのためには継続的なメンテナンスやハードウェア、ソフトウェアともに性能や機能の向上に対応していく体制を確立しなければならず、引き続き研究を続けていかなくてはならない。 表示デバイスについては主にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を利用したコンテンツについて検証した。2016年12月にはSIGGRAPH Asiaに参加したが、多くの実証実験やコンテンツはHMDが中心になっており、今後HMDを視野に入れたコンテンツ開発をしていかなければならない。 本研究分野は目まぐるしく技術が変化しており、本課題の研究期間だけでも、随分とハードウェア、ソフトウェアの進化が見られた。従来なら動作が不安定であったファイルサイズの3Dデータも現在の端末なら問題なく動作する場合も多い。そんな理由からデータのあるべき形といったはっきりとした終着点は決定できないが、これまでの研究から今後の状況の変化に対応した現時点の最適な手法については導き出すことができた。
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