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2015 年度 実績報告書

知的障害者表象に関する比較文学研究とデータベースの構築

研究課題

研究課題/領域番号 25704006
研究機関北九州市立大学

研究代表者

河内 重雄  北九州市立大学, 文学部, 准教授 (10581530)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード知的障害 / 比較文学 / 日本近代文学
研究実績の概要

2年間の調査により、約60もの韓国の知的障害者が描かれている文学作品をリストアップすることができた。特に戦前の雑誌、文学作品を重点的に調査、比較文学研究のためのデータベースをある程度構築し得たと考える。作成したデータベースに基づき、3年目に「小川未明「海蛍」論と「青木洪「ミインメヌリ」論」を執筆。前者は小川未明「海蛍」(1923年)と李光洙「少年の悲哀」(1917年)の比較研究。後者は青木洪「ミインメヌリ」(1942年)と桂鎔黙「白痴アダダ」(1935年)の比較研究である。
小川未明「海蛍」では、近代以降の知的障害言説と、結婚制度のリンクがテーマとなっている。知的障害者はまともな人間関係を築けない、社会にとって有害な存在だとする近代医学的な知的障害概念が一般化したことで、大正期の農村のように結婚生活がさほど複雑ではないようなところでも、知的障害者であることは結婚相手として不適格だということを意味することとなった。近代化の思わぬ副産物を描いている。
「ミインメヌリ」の作品世界では、男尊女卑という近代の言葉で表されるような前近代的な価値観・精神と、古くからの婚姻制度とが相互補完的に結びついている。そのため、古臭い精神だけを新しくしようとしても、制度によって絡めとられてしまい、うまくいかない。新しい価値観・精神とそれにあった新制度、両方同時に変える必要のあることが示されている。
韓国作品との比較で気付いた点だが、日本近代文学では知的障害者の結婚がテーマとなることはほとんどない。逆に、戦前の朝鮮の文学で知的障害者の結婚がテーマとなることが珍しくないのは、韓国では知的障害者を収容する施設等がほとんどなかったことや、男子中心の結婚制度と関係しよう。比較文学により、戦前の日本文学における新たな知的障害者表象の特徴を明らかにすることができたことが、本研究の成果である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] 小川未明「海蛍」論―李光洙「少年の悲哀」との比較より―2015

    • 著者名/発表者名
      河内重雄
    • 雑誌名

      九大日文

      巻: 26 ページ: 67-77

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 青木洪「ミインメヌリ」論―桂鎔黙「白痴アダダ」との比較より―2015

    • 著者名/発表者名
      河内重雄
    • 雑誌名

      語文研究

      巻: 120 ページ: 14-32

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2017-01-06  

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