研究課題
若手研究(A)
本年度は、ルーン石碑生産の中核であるスカンディナヴィア本土のデータ整理をすすめるとともに、ブリテン諸島、アイスランド、東方というスカンディナヴィア影響圏における石碑の建立状況に関する調査を進め、成果を発表した。すなわちブリテン諸島については中世英語英文学会の招待シンポジウムにおいて「歴史学的アプローチによるブリテン諸島のルーン碑文」を口頭報告、アイスランドについてはInternational Workshop "Old Icelandic texts in medieval Northern Europe"において"Were rune stones raised in Iceland? An attempt at historical interpretation"を口頭報告を行った上で報告書に寄稿し、東方世界については「ルーン石碑からみた「東方」とロシア 11世紀スカンディナヴィア人による東西交渉の一局面」の原稿を編者に提出した。またこうしたルーンが初期近代において独自のあり方で再評価されるプロセスを「ゴート・ルネサンスとルーン学の成立 デンマークの事例」ヒロ・ヒライ・小澤実編『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』に執筆した。以上の研究調査より、(1)現存する資料は少ないものの、ルーン石碑は、ブリテン諸島や東方といった本土以外のスカンディナヴィア影響圏においても、本来は一定程度作製されていた、(2)しかしながら現地社会における石碑の機能のあり方は、王権が支配権を及ぼすスカンディナヴィア本土とは異なる様相を見せ、(3)アイスランドでは石碑の存在自体は知られていたにもかかわらず、特殊な自然社会条件ゆえに、石碑がほとんど建立されなかった可能性が高いことを示唆することができた。
2: おおむね順調に進展している
所期の目的にしたがい、データ整理とその分析を行い、その結果に基づいた、日本語並びに欧語の口頭報告並び研究成果が公表されているため。
昨年度に引き続き、ルーン石碑生産の中核であるスカンディナヴィア本土のデータ整理をすすめるとともに、スカンディナヴィア影響圏における石碑の建立状況に関する調査も進める。中核と影響圏との関係を明確化するためにも、とりわけ王権とルーン石碑との関係に注視し、デンマーク王権の石碑建立政策について欧語で報告のうえ、論文としてまとめる予定である。
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『史苑』
巻: 74-2 ページ: 49-50
巻: 74-2 ページ: 208-210
ヒロ・ヒライ・小澤実編『知のミクロコスモス 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』(中央公論新社)
巻: 0 ページ: 69-97
Minoru Ozawa (ed.), Proceedings of the International Workshop "Old Icelandic Texts in Medieval Northern Europe"
巻: 0 ページ: 35-40
『西洋中世研究』
巻: 5 ページ: 158
巻: 5 ページ: 193-194
http://www009.upp.so-net.ne.jp/m-ozawa/