本研究は、北東アジアにおける古代から中世にかけての集団の統合、瓦解、再編の過程と周辺地域に及ぼした影響について、考古資料の検討から、実証的に跡付けることを目的とする。具体的には、靺鞨、渤海、女真を対象とし、各時代における地域集団の様相と交渉関係、次代への継承関係を考古学的に解明しようとするものである。 平成29年度は、前年までの分析成果を国毎で纏めるとともに、中国領内の新発見資料の報告書を渉猟し、靺鞨及び渤海、女真期の最新研究成果について整理を行う作業を実施した。これにより靺鞨、渤海、女真期における中国東北部~ロシア沿海地方の広域に及ぶ同期の土器群の共通性と地域差に関する一定の方向性が得られた。現在、上記の成果を、公にすべく検討を加えている。資料実見では、ロシア科学アカデミー極東支部、極東連邦大学附属博物館に収蔵されている資料を中心に実見、分析し、同地方の靺鞨初期の様相について一定の方向性を得られた。 これらの成果の一部は、オックスフォード大学で開催された国際シンポジウムで公表した。現在は、論文化を進めているところである。 また前年度より、靺鞨の西限地域と更に西方にある諸文化との関係について検討範囲を広げてきた。本年はモンゴル東部国境地域での調査を実施した。結果、靺鞨と併行関係と考えられる囲壁を有する基壇遺跡を踏査することができた。当該地域は、古代から中世においても国境となっており、ここに唐代併行とみられる遺跡が発見できた意義は大きい。今後、当該地域の在地集団であるブルォトイ文化と国家との関係、更に東に隣接する靺鞨との関係を検討する予定である。尚、この調査の概要については、研究会で発表している。 また関連して、当該地域の北部にあるブリヤート共和国において、申請者のこれまでのモンゴルでの調査成果と極東領域との関係に関する見通しについて、発表も実施した。
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