研究課題/領域番号 |
25704019
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
磯野 真穂 国際医療福祉大学, その他の研究科, 講師 (50549376)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不確実性 / リスク / 医療人類学 / 循環器疾患 / 心房細動 |
研究実績の概要 |
当該年度は、例年通り調査を進めるとともに、本研究の理論的なベースについての補強を進めた。また循環器医療においての射程を不整脈の一つである心房細動に定めることを決定した。 その理由の第一は、心房細動がきわめて不確実性の高い疾患であることにある。心房細動それ自体は、それほど問題のない疾患であるが、心房内に血栓ができやすくなり、それが脳に飛んだ場合、脳梗塞を引き起こす。しかし血栓を作りにくくするための治療である抗凝固療法を受けると、今度は出血しやすくなるために脳出血のリスクが上がってしまう。つまり治療を受けても、受けなくても、重篤な疾患にかかりうるリスクをかかえる疾患なのである。また選定理由の第2は新しい抗凝固剤であるNOACが医療現場に浸透し始めたことであった。NOACは、出血のリスクを下げると言われているが、一方で、従来薬で行われていた、定期的な血液検査による効き目の確認が不要になる。これは使う側にとっては負担の軽減になるが、従来薬のメリットを知る医師にとっては新たなリスクと映る。つまり新薬が新たなリスクを創出したとも言える状態が起こっているのである。 このような治療によるリスクの創出は、文化人類学の最先端の理論である存在論的展開の俎上に乗る可能性を秘めているといえる。なぜなら現行の理論は、技術や人間のふるまいが具体的なモノやリスクを創出していると考え、それができあがっていくプロセスに着目をしているからである。 以上を総括すると、当該年度の成果は、研究の射程を定められたこと、さらには文化人類学の最前線の理論と本研究の接合点を見つけられたことであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査計画が遅延している理由は、二つある。まず一つは、申請者の所属機関が一昨年より変わっており、新しい機関での業務に思った以上に時間を取られ、フィールドワークに出向く時間が減ってしまったこと、いまひとつは、調査においてどこに焦点を絞り、設問を以下にするかを決定することに計画以上の時間を要したことにある。当該年度の反省を踏まえ、今年度は遅れを取り戻すべく努力する所存である。
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今後の研究の推進方策 |
週1回のフィールドワークが可能になったため、それを継続的に実施し、所属機関の長期休暇を使って、それを論文にまとめ成果を発表していく予定である。また理論的側面については研究会で治験を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加予定であったが、成果のまとめが遅れ、そこにたどり着かなかったことが原因の一つである。加えて、インタビューの文字起こしのための予算も計上していたが、フィールドワークに出向く回数が計画を大幅に下回ってしまい、その点においても次年度利用額が生じでしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度実施できなかったフィールドワークを今年度行い、またその成果を今年度と来年度にかけて国内外の学会で発表をしていく予定である。予算はインタビューの際の文字起こし、および学会の渡航費と、英語開催の場合はそのためのネイティブチェックに用いる。またその際に必要となる備品および書籍の購入に予算を利用していく。
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