研究課題/領域番号 |
25705006
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
大澤 武司 熊本学園大学, 外国語学部, 准教授 (70508978)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国外交 / 日中関係 / 文化大革命 / 対日外交経験 / 知日派 / 毛沢東の対日戦犯裁判 / 戦後日中交流年誌 |
研究実績の概要 |
平成28年度の主たる研究計画は、当初は「本課題の最終年度」として、中国外交部档案館の史料公開状況をにらみつつ、可能であれば、史料調査・収集の総仕上げを行うと同時に、仮説に対する体系的検証を行い、1960年代における「対日外交経験」の積み上げの内実、およびそれが日中国交正常化に与えた影響、さらにはその因果関係の実証的解明に取り組む予定であった。 もっとも、平成28年4月14日ならびに16日に研究代表者が居住する熊本県熊本市は2度にわたり震度7の未曽有の大地震に襲われ、さらに勤務先の大学・大学研究室は極めて大きな被害を受け、研究活動のみならず、教育活動にも大きな支障が生ずる状況となった。結果的に春学期終了(平成28年8月下旬)までは、研究活動がほぼ停止する状況となった。 平成28年度の研究活動としては、予定通り大澤武司解説・編集協力の資料集『戦後日中交流年誌』の第2回配本分8巻(2016年6月)に「解説」を付して刊行し、計2回全17巻の刊行を完結し、本研究の研究対象期間となる1949年から1972年にかけての日中関係史研究の体系的・網羅的な基本資料集を刊行するという大きなプロジェクトを完成させた。 また、さらに2016年11月には、研究成果の一端を組み込んだ初の単著を刊行した。これは大澤武司『毛沢東の対日戦犯裁判―中国共産党の思惑と1526名の日本人』(中央公論新社)であり、いわゆる「中公新書」として、12000部の発行部数での刊行となり、研究成果を世に問うことができた。 なお、平成28年度は震災のため、計画通りの予算執行ができず、231,448円の未執行分が残ったが、これについてはすでに震災を理由とする研究期間の延長申請を提出し、承認を受けており、平成29年度も研究成果の発表や研究交流のための経費として利用する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、①史料調査・収集、分析の深化、②研究成果の発表などを主たる研究計画としたが、前述の震災の結果、特に史料調査・収集、分析の深化に関しては、十分な時間を割くことができなかった。 ただ、②に関しては、前掲の『戦後日中交流年誌』第2回配本8巻の刊行、ならびに単著『毛沢東の対日戦犯裁判』の刊行、さらには中華人民共和国遼寧省瀋陽市における国際シンポジウムでの研究報告(8月28日)、さらには宮崎や東京などでの講演会(平成29年2月・3月)など、精力的な成果発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
すでに本来の研究計画であれば、平成28年をもって最終年度とし、研究成果の総括報告を行うべきであったが、震災のため、分析の深化に若干の不足がある。 平成29年度については、基本資料集『戦後日中交流年誌』(計17巻)やこれまで調査・収集済みの中国外交部档案などに依拠し、1960年代の中国の「対日外交経験」の蓄積に関して、分析の深化を進め、最終的な成果のとりまとめに向けて進むこととする。なお、未執行分の残金については、研究成果の発表を目的とする研究交流・出張などに利用する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に発生した熊本地震により、同年8月まで研究活動を休止せざるを得ず、研究費の執行に支障が生じたため。期間延長申請を行い、平成29年度までの研究期間の延長についてすでに承認を受けている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果の発表のための研究交流ならびに出張旅費として使用する。
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