本研究は、日中両国の関係史料を利用し、日中国交正常化過程に至る中国の「対日外交経験」の蓄積過程の解明とその蓄積がその実現に与えた影響を考察するものである。研究期間中、日中関係の悪化により史資料調査・収集に厳しい制約が生じ、さらに勤務地の熊本が大規模地震に襲われるなど想定外の事態が発生したが、刊行資料の調査・収集を体系的かつ積極的に進め、特に「戦犯処理」や「歴史問題」に関する中国側の認識の変容、すなわち脱「革命外交」の過程を一定程度まで解明できたと考える。なおこの成果は単著『毛沢東の対日戦犯裁判』(中公新書)や『戦後日中関係年誌』(全17巻)として、社会に幅広く問うことができた。
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