研究課題/領域番号 |
25705008
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
齋藤 裕美 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (60447597)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イノベーション / 医薬品 / 基礎研究 / 産学官連携 / 医療保険制度 |
研究実績の概要 |
本研究は、革新的な医療技術の創出からそのアクセスに至るまで「医療イノベーション」という一つの軸に従い、(1)医療イノベーションを促す科学技術政策と、新しい医療技術へのアクセスを担保する医療保険制度の整合的なあり方を提示する、さらに(2)医薬品に焦点を当て、多角的な観点から医療イノベーションの価値を整合的に測定する、(3)それを踏まえて企業の研究開発インセンティブをもたらす薬価設定、および患者の費用負担のあり方について提示する、ということを目的としている。本年度は上記の研究目的のうちの(1)についての展望論文を学会誌に掲載した。これによって、ひとまずこれまでの研究を通じた問題整理ができたと考えている。また、このテーマに関連した総説を学会誌に掲載した。これによって研究者のみならず実務家の方々にも医療イノベーションの展開に関する問題点を周知できたと考えている。また(2)に関わるが、科学技術そのものに対する国民の意識調査を利用した分析については国際学会でも報告した。しかしながら(2)については、下記の進捗状況でも記しているように、軌道修正を図る必要がでているため、予定通りには進んでいないが、新たに得られた観点(基礎研究から製品化に至るまでの過程をより詳細に見る、特に医薬品に関してはパイプラインデータにまでさかのぼって検討する)に基づいた研究を進めた。一部成果については、いつくかの国内学会で報告して、多くのコメントを得ることができた。このコメントを踏まえて、来年度は国際学会でこの成果を報告すべく申請中である。後述の進捗状況欄でも示しているように、医薬品のパイプラインデータから医薬品の研究開発におけるボトルネックを明らかにすることは本研究にとって副次的な研究成果にもなると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的のうち(1)については完了したと考えている。しかしながら残り(2)(3)、特に(2)については、大きく軌道修正を図らなければならないことがわかった。医療イノベーションの価値は、個々の価値(論文で示される学術的価値、特許で示される技術の価値、製品につながることによる経済的価値)の積み上げだけでは測定することが難しい。特に基礎研究から製品(ここでは主に医薬品)につながるまでには、制度的な要因なのか、それとも研究開発の組織的要因なのか、R&D戦略による要因なのかわからないネックがあり、そこをどう評価するのか、再検討しなければならないことが改めてわかった。そこでそもそもどのような要因が影響するのかを明らかにするために、医薬品のパイプラインデータから、どの段階で開発が止まるのか、その背景は何かについて改めて検討しているところである。その点が明らかになれば、本研究の目的にかなうことに加えて、医薬品の研究開発におけるボトルネックを明らかにするという意味での副次的な研究成果も得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
イノベーションの価値を測定するためのデータ収集にはほぼ十分行い、一部については分析を始めているので引き続き分析を進める。また上述したようにボトルネックになっている部分の改善を図る。今年度前半までには一通りの成果をまとめて、後半に論文化と報告を順次行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた研究計画に変更が生じた。当初はイノベーションの社会的な価値を大規模なアンケート調査を通じて測定することを考えていたが、この部分について今一度熟考することが必要になり、今年度中での実施は見送った。また当初、医師への調査(アンケートおよびインタビュー)を通じた医療イノベーションの価値の測定も考えていたが、研究をすすめるにつれ対象を医薬品に絞ったため、医師への調査が妥当かどうか再検討する必要があり、これも当初の実施をまずは見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは既存の客観的なデータ(大学と企業の研究開発状況、特許、企業の財務データ、医薬品のパイプラインデータなど)の追加(特に企業の財務データ)を行い、よりデータベースを充実させたい。また今年度見送った、一般の人々に対するアンケート調査に使用することも考える。また医学研究者および医師へのインタビュー調査を通じて、研究および臨床の側から医療イノベーションの価値を捉える試みも行いたい。 また後半では国内外での研究報告を行って、論文化につなげる。
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