研究課題/領域番号 |
25705014
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
相澤 真一 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (00456196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 後期中等教育 / 私立学校 / 地域間格差 / 国際比較 / 東アジア / 東南アジア / 人口減少期 / 後発産業化 |
研究概要 |
本研究は、戦後日本における中等教育の量的拡大過程と人口減少期における中等教育の量的縮小過程についての研究を、海外の研究者と協同することによる多国間比較によって、日本を起点とした国際比較研究に展開させるものである。当初計画に対して、約半額で研究を遂行することとなったため、東欧地域は割愛し、アジア地域を中心とした国際比較研究を進めてきた。具体的には、ベトナム、シンガポールについては、国内研究協力者の協力を得て、台湾、香港については、海外研究協力者の協力を得て、国際比較研究を進めている。平成25年9月には、これらの研究協力者全員が集合しての会合を東京で行った。 対象地域を調べることにより、濃密な問題関心の共有を踏まえた質的調査を進めてきた。平成25年6月に台湾にて、日台比較研究の成果を報告した結果、多数の台湾の研究者の関心を集めることとなり、その中でも特に問題関心を共有した1名を海外研究協力者として協力を依頼し、平成26年3月には台北、台東の2地域の公立、私立、国立の学校において集中的な聞き取り調査を共に行った。ベトナム、シンガポール、については、国内研究協力者とともに平成26年2月に現地を訪れ、インタビュー調査を遂行し、貴重な聞き取りの成果を得た。台湾では、生徒減少期を見据えた対応策や地域間格差についての踏み込んだ資料を集められたほか、ベトナムのハノイの調査では、学校のみならず政府関係者へのインタビューを通じて、マクロ―ミクロ両方の視点から当該社会の後期中等教育を考える視点を得た。 また平成26年7月に行われる国際社会学会世界社会学会議横浜大会では、本研究計画とかかわりの深いセッションを組織した結果、平成25年9月末までに全世界から16本の応募があった。そのうち8本を採択し、現在、大会に向けた準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」とした理由として、当初比較を予定していた地域についての比較調査が遂行できていることが挙げられる。もちろん、予算上の制約により、アジア、東欧の両者の比較を予定しながら、アジア地域に限定した点では、当初計画の変更があった。しかしながら、研究代表者と研究協力者(国内外ともに)との非常に濃密な知的対話による視点および研究計画の共有が図られていることは、国数を減らしたことに余りある成果を上げていると言える。それらの成果の具体例として、三点挙げられる。第一点として、台湾では、日本同様に大都市と過疎化の著しい地域の両者を比較したデータ収集を進めることができ、都市国家と格差のある地域を抱えた国との違いを明らかにするための視点およびデータを得たことは大きな成果であると言える。第二点として、ベトナムについては、ハノイ都市部における詳細なインタビュー調査によって、経済発展途上にあるポスト社会主義国における公教育の位置づけが明確になりつつある点も大きな成果であると言える。また、台湾、ベトナムの両調査により、日本との比較としての地域間格差とそこにおける公立/私立両学校の位置づけにも注目できている点も大きな収穫である。第三点として、香港、シンガポールという非常に教育達成度の高い都市国家を含めることにより、都市国家間の違いおよび都市国家とその他の国家との違いの両者にも展開が進んでいる点も順調に進展する中で得た成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の推進方策として、第1に比較対象国の追加検討が、第2に比較研究の深化を踏まえた出版の準備が挙げられる。 第1点目の比較対象国の追加検討については、アジア地域の比較を進めてきて、東アジア、東南アジアそれぞれであと1か国ずつ比較対象を増やす可能性を探っている。既に韓国を加える方針は立っており、さらに東南アジアで1か国追加する可能性を探っている。またイギリスやフランスを比較に含める方向も検討しており、既にイギリスについては、日本、台湾との比較を含めた学会報告を予定している。 第2点目の比較研究の深化については、各国共通のパースペクティブの共有を図るとともに、国際社会学会世界社会学会議(ISA World Congress of Sociology)およびその後の国内外の学会、研究会を機会に検討を深めていき、今年度中にワーキングペーパーをまとめる予定で考えている。そして、最終年度である来年度には出版の可能性を探っていく予定である。 さらに、この比較研究を社会理論として昇華させていくために、ピエール・ブルデューの社会学的研究の参照を行っており、イギリスにおいてブルデューの『ディスタンクシオン』が応用された研究について、調査、検討を進めている。本年はこの点についても学会発表を予定しており、さらに踏み込んだ研究を行っていく予定である。
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