日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、シンガポールの7か所を対象とした後期中等教育段階の拡大とその後の展開についての調査を進めてきた。全体としては、平成25年度の現地調査、平成26年度の国際社会学会世界社会学会議横浜大会における成果を踏まえて、平成27年度は5月30日に国際シンポジウムを開催し、全員の成果を持ち寄った。 また、日本、韓国、台湾については、生徒減少期に入っていることから、拡大後のフェーズについての情報収集も進めてきた。平成27年度は、この生徒減少期の対応を明らかにするために、とりわけ台湾には複数回にわたる聞き取り調査を実施し、日本との相違点についての貴重な示唆を得てきた。 以上の各国語のできる研究協力者と共に、国際学力テストの分析の専門家と教育理論の専門家にも協力を仰ぎ、全体を俯瞰できるための理論、実証の枠組み作りにも時間をかけて取り組んできた。年度後半以降は、それらを論文化する作業を進め、その過程を、東アジア社会政策ネットワーク会議、ヨーロッパ社会学会、日本教育社会学会などで発表を行った。これらの成果はワーキングペーパーとして、まとめられつつあり、さらにそれを海外出版社とコンタクトを取り、英文書籍として発表できる方途を整えた。 これらの比較研究を経た結果、欧米の枠組みではとらえきれない東アジアの後期中等教育における共通の特徴が見られるとともに、シンガポールや香港などの都市地域ならびにポスト共産主義国としての特徴も別に見られること、またそれぞれの植民地経験などによる固有の影響なども含めた包括的な説明を国際発信することに成功することができたと言える。
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