研究課題
本研究は、うつ病と不安症に対する診断横断的な認知行動療法の統一プロトコルの有効性をランダム化比較試験により検証することを目的としていた。また、この臨床試験の附属研究として、様々なプロセス指標や媒介・調整変数を考慮した統一プロトコルの治療機序の検討、治療前後の脳画像撮像による治療反応に関与する神経基盤の検討を副次的な目的としていた。当年度は、引き続き臨床試験を順調に継続させ、登録事例は69例に到達した。本年度、脳画像撮像37件行い、累計で25症例ですべての脳画像撮像を終えた。臨床試験としては、毎週の独立評価者会議とスーパービジョンを継続させるとともに、評価者の評定者間一致度の算出や、第三者により介入治療のアドヒアランス評価を継続した。当初の目標症例数は54例であったが、2016年4月に米国の学会にて発表された最新知見の情報を踏まえ、効果安全性委員会および倫理委員会に諮った上で、目標症例数を104例に変更し、臨床試験登録情報を修正した。また、より厳密に介入アドヒアランスを確認することを目的として、米国の統一プロトコル研究所(Unified Protocol Institute)からの直接の指導を受けられるよう、セキュリティの高い画像共有システムを検討し、倫理委員会の変更申請をし、承認を得た。さらに、米国の統一プロトコル研究所を訪れ、介入治療の適切な実施法や、より厳格な臨床試験の進め方についての意見交換をするとともに、米国で実施されている治療記録から直接学ぶ機会を得た。統一プロトコルの治療メカニズムの一部を説明すると考えられる感情調整スキルに関して、既存のデータを二次解析し、日本人における因子構造や疾患別の特徴を検討した(Fujisato et al., 2017)。日本における統一プロトコルの臨床実践を、文化的考察を交えて、米国で出版されるハンドブックのチャプターの一部として執筆した。
2: おおむね順調に進展している
臨床試験としては、おおむね順調にリクルートを達成し、当初想定した目標症例数に到達した。しかし、2016年に発表された最新知見を踏まえ、目標症例数を104例に変更し、臨床試験を継続することとした。臨床試験の運用上で大きな問題となる事象はなく、アウトカム、治療機序、神経基盤に関するデータを収集した。
これまで構築した臨床試験の運用体制を継続する。
本年度は、研究自体は計画通りに順調に進行したものの、最新の知見により、臨床試験自体をさらに継続する必要があり、平成28年度以降も研究を継続するために、計画的な研究費の使用を見直す必要があった。そこで、予定していた人件費や謝金を最小限に抑制し、次年度に継続される研究のために使用できるように調整した。
臨床試験を継続するために、臨床試験のコーディネートに伴う人件費に使用予定である。
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Journal of Affective Disorders
巻: 208 ページ: 145-152
10.1016/j.jad.2016.08.064.
http://cbt.ncnp.go.jp/research/archives/5