研究課題/領域番号 |
25705021
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
木田 哲夫 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80419861)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 注意 / 多感覚 / 脳波 |
研究概要 |
注意制御中には様々な脳領域の間での注意制御信号の相互伝達により領域間の結合状態が強化・減弱し、脳内ネットワーク特性が変化することによって様々な感覚系からの入力の素早い正確な認知が可能になると推測されている。しかしネットワーク特性の変化について実証的な研究はこれまで行われてこなかった。一方、我々の日常生活は多感覚的な環境下にあるが、これまでの注意研究の多くは単一感覚系に焦点を当てたものが多かった。そこで本研究では多感覚性注意制御の神経機構を解明するために、視覚、聴覚、触覚刺激を用いた注意課題における注意制御期間中の脳内ネットワークの機能的特性を明らかにすることを目的とした。とくに本研究では非侵襲的脳機能評価法を用いて脳機能の評価を行うことによりこの問題にアプローチすることを試みた。本年度は非侵襲的脳機能評価法の中でも時間分解能に優れる脳波計測を用いて多感覚性注意制御中の脳内ネットワークの機能的特性の検証を行った。視・聴・触覚刺激を用いた多感覚的注意課題を遂行している最中の被験者から脳波を計測した。計測した信号に対して時間周波数解析、結合状態解析およびネットワーク解析を行った。時間周波数解析の結果、注意制御期間中にアルファー帯域およびベータ帯域にパワーの低下すなわち脳波の脱同期化が認められた。またネットワーク解析を行ったところ、クラスター係数の低下が認められた。これらより多感覚性注意制御中には脳活動パターンの変化だけではなく脳内ネットワーク特性にも特徴的な変化が起こることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では多感覚性注意制御の神経機構を解明するために非侵襲的脳機能評価法を用いて、視・聴・触覚系において注意制御中の脳領域間結合状態ならびに脳内ネットワークの機能的特性の時間動態を検証することを目的とする。とくに本年度は、脳波計測を用いて多感覚性注意制御中の脳内ネットワークの機能的特性を明らかにすることを目的としたが、「研究実績の概要」に記載した通り、多感覚性注意制御中の活動パターンおよびネットワーク特性に特徴的な変化を認めた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は時間分解能に優れる脳波を用いた検証を行った。今後は、脳波と同等の時間分解能に加え、高い空間分解能も有する脳磁場計測を用いて、多感覚性注意の脳内機構についてさらなる検証を行う。特に多感覚性注意制御中の脳活動パターンの変化およびネットワーク特性の変化について詳細な検証を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の遂行に必須の実験機器(経頭蓋的磁気刺激装置)を翌年度(2014年度)に購入する計画であったが、2013年度初め頃に発生した為替変動により海外製の実験機器が高騰したため、当初予算では上記の実験機器を購入することが困難であった。そこで2013年度の経費使用をできる限り抑えながら研究を遂行した結果、次年度使用額が生じた。 上記の理由により生じた次年度使用額は、当初から2014年度に購入予定であった実験機器(経頭蓋的磁気刺激装置)を購入するために充当される。
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