研究課題/領域番号 |
25706002
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
内藤 昌信 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30346316)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 準結晶 / 分子認識 / 準周期性 |
研究実績の概要 |
準結晶表面は表面自由エネルギーが小さく、有機化合物との接着性に乏しい。そのため、これまでに代替テフロンとしてフライパンの表面加工などに用いられてきた。一方、準結晶が持つ準周期性原子配列を特異的に認識できる有機材料を見出すことができれば、準結晶界面化学という新しい研究分野が拓けるのみならず、新たな金属―有機複合材料の創出が期待できる。 本研究では、まず、準結晶と有機・半導体・無機酸化物の相互作用の解明することから着手した。具体的には、準結晶表面に選択的な有機分子を探索するため、生物進化法であるファージディスプレイ法による準結晶認識アミノ酸配列の探索を行った。本法では、ランダムなペプチドライブラリの中から、準結晶に選択吸着するナノサイズ(数-10nm)のペプチドを探索できる。その結果、準結晶を認識するナノサイズのペプチド配列(12残基)のスクリーニングに成功した。一般的に、金属酸化物を認識するペプチドでは、酸化金属表面との静電的な相互作用によって結合するため、カチオン性のアミノ酸配列が多い。しかし、準結晶認識ペプチド配列には、アラニンのような疎水性アミノ酸やアスパラギンのような中性アミノ酸を含む配列が選択的に得られるという、これまでの金属表面を認識するペプチドとは全く異なる新しい知見が得られた。さらに、H26には、スクリーニングする際において、準結晶を塩基性条件下に置くと、特定の元素だけがご準結晶中から抜けるリーチングの手法を用い、大気汚染源を除去する触媒としての機能も新たに見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物進化法であるファージディスプレイ法を使った準結晶を認識するペプチド探索では、当初立ち上げに苦労をしたが、H26年度には、博士研究員や研究補助員を補充することで研究が大きく進展した。その中でも特記すべき点は、スクリーニングを塩基性条件で行った際に、準結晶を構成する特定の元素のみがリーチング(溶解)し、多孔体構造を形成することを見出した。さらに、この多孔体構造を使って、大気汚染源となるガス成分の分解実験を行ったところ、非常に高い活性を示すことを見出した。これは、準結晶ならびにその類縁体構造に由来する特異な現象であり、当初予定していた準結晶の新規機能の発見である。今後は、更に詳細に準結晶構造に由来する触媒機能発現の機能解明に焦点を当てて研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH27年には、これまでの研究で得られた2つの成果について、さらに研究を進めていく。 (1)準結晶認識ペプチドの同定と機能解析 すでに、ペプチド自身のスクリーニングは終了しているが、まだ限定的な組合せのみしか結果が得られていない。今後は、スクリーニングに用いる準結晶のバリエーションを増やすことで、準結晶認識ペプチドに共通するモチーフを見出していく。さらには、その知見を元に、準結晶と異なる材料との複合化に関する知見も収集する。 (2)準結晶およびその類縁体を出発源とする多孔体構造による触媒機能評価 H26年度には、これまで予想していなかった準結晶およびその類縁体構造に由来する特異な不均一触媒としての機能を見出した。現時点では、予備的知見であるが、H26年度に引き続きH27年度も触媒活性の評価を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品などの経費の端数の計算上、金額が903円の差額が発生したため、次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の経費として計上する。
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