研究課題/領域番号 |
25706003
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀 匡寛 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (50643269)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 半導体物性 / ドーパント原子 / 界面欠陥 / チャージポンピング法 / 電子スピン共鳴 / EDMR法 |
研究実績の概要 |
平成26年度の主な成果は、以下の通りである。 1.微小電流の実時間計測手法の確立。 MOSトランジスタの界面欠陥評価手法(チャージポンピング法)での電流を実時間領域で計測した。その結果、チャージポンピングの素過程(電子の界面欠陥への捕獲、界面欠陥からの放出、正孔との再結合)に起因する電流ピークを観測することに成功した。そして、電子の捕獲と正孔との再結合に起因する電流ピークを詳細に解析することで、電子の捕獲断面積と正孔の捕獲断面積を別々に算出した(Appl. Phys. Lett. 2014掲載)。また、電子の放出に起因する電流ピークが、2つのピークに時間分解できることを見出し、これらのピークがそれぞれ異なる2種類の界面欠陥から放出された電子に起因するものであることが分かった(Appl. Phys. Lett. 2015掲載)。今後は、この技術を単一欠陥検出や単一ドーパント検出技術に応用することを視野に入れる。 2.EDMR法の立ち上げ。 EDMR法(Electrically Detected Magnetic Resonance)は、電子スピン共鳴をマイクロ波の吸収ではなく、微小電流の変化として検出するもので、電子スピン共鳴法と比して感度の高い手法である。H26年度はテストデバイスとしてpn接合型ダイオードを用いてEDMRの測定を行った。その結果、再結合電流に起因するEDMR信号のピークを検出した。そして、そのピークの解析により、緩和時間を見積もることに成功した。次年度は、測定系の感度の向上とMOSトランジスタ中の少数個の界面欠陥やドーパント原子の検出を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題における重要な要素技術の一つであるEDMR技術を立ち上げたことは大きな進展である。当技術の高感度化に向けて、サンプルホルダの改善等を前倒しで進めている。また、チャージポンピング電流の実時間計測技術においては、測定データの解析が当初の計画よりも早く進み、学術論文にてその成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
EDMRの感度を向上させ、少数個のドーパント原子の準位を介したスピン偏極電流の検出を目指す。必要に応じて、マイクロ波照射に起因するノイズを除去するためのシールディングゲートの配備等を検討する。また、H26年度に引き続き、チャージポンピング電流の実時間計測の解析を進めることで、界面欠陥準位での電子のダイナミクスを詳細に調査する。ここで得られた知見をもとに、チャージポンピングを高精度な単一電荷転送に応用していくことも視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも出張旅費の支出を抑えることができたため、残額(学術研究助成基金助成金分)を次年度に繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は、次年度の旅費に充てる。
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