従来の人工細胞研究において「膜」はバリア性のみの脂質二重膜小胞(リポソーム)が多く用いられてきた。これに対して本研究では、さまざまな機能を担う膜タンパク質をリポソーム膜に組み込んだ「均一で細胞サイズのプロテオリポソームアレイ」を実現することを目的とした。申請者の先行研究成果(若手B)を基盤として、膜タンパク質が再構成された細胞サイズのプロテオリポソームアレイ形成技術を提案し、また再構成された膜タンパク質の基質結合・輸送機能の活性評価を行った。 本研究では、プロテオリポソームアレイ形成法として、ベシクルスプレー法による膜タンパク質再構成リポソームの形成を提案した。プロテオベシクル水溶液をエレクトロスプレーにより基板上のマイクロパターンに選択的に塗布し、パターニングされたプロテオベシクルの水和と同時に細胞サイズのプロテオリポソームアレイを形成させる。スプレー後の膜タンパク質の活性を保つための保湿材をプロテオベシクル水溶液に混合する点について検討を行った。これにより得られたプロテオリポソームアレイにおいて、ATP依存的に基質を輸送する膜タンパク質FoF1の活性を示唆する結果を得た。本成果は、膜タンパク質を簡便にリポソームに再構成する手法の一つになり得る点で重要な成果と考える。一方で、温度やpH刺激に応答するリポソームの作成についても研究を進めた。リポソームは小胞形状であるため、その中に様々な物質を内封できる。ここでは、蛍光置換基を持つ温度応答性高分子、あるいはpH応答性高分子をリポソーム内部に内封させることで、温度、pHの変化に対して蛍光輝度が変化する仕組みをリポソームに組み込んだ。 膜タンパク質や機能性分子を膜に組み込み、刺激・情報に対して自律的に応答し得るリポソームを作成できた。今後、本成果を展開し、外部刺激に対して連続的に応答するモデル生体膜の作成へと発展させていきたい。
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