本年度は、重金属層/強磁性層/酸化物層の3層から成る薄膜へテロ構造において、スピンホール磁気抵抗効果を利用して重金属層のスピンホール角の大きさを見積もった。薄膜へテロ構造の重金属層には5d遷移金属のHf、Ta、W、Re、強磁性層にはCoFeB、酸化物層にはMgOを用いた。スピンホール磁気抵抗効果の測定と解析の結果、スピンホール角は重金属層の構造に大きく依存することがわかった。特に各元素が電気抵抗率の大きいアモルファス構造をとるとき、スピンホール角が大きくなることが明らかになった。各元素がアモルファス構造をとったときのスピンホール角はHfが0.11、Taが0.10、Wが0.23、Reが0.07であった。 また、W/CoFeB/MgOにおけるスピンホール磁気抵抗の温度依存性は、強磁性層のスピン分極率の温度依存性を仮定することで説明できることがわかった。この結果、スピンホール磁気抵抗からスピンホール角をより確度良く見積もるためには、強磁性層のスピン分極率に依存する「縦スピン吸収効果」をモデル計算に含めることが重要であることを明らかにした。
|