有機薄膜太陽電池の高効率化には、膜中における有機ナノ結晶の配向を厳密に制御することが重要である。前年度までに、p型半導体特性を示す熱変換前駆体材料を対象とし、レーザー加熱法を用いて有機ナノ結晶の配列・配向化について検討した。その結果、センチメートルオーダーの広範囲で方位のそろった一軸配向膜を得ることに成功した。しかし、デバイス化には、透明電極上で一軸配向膜を形成する必要があり、通常透明電極として用いられるITO/ガラス基板では赤外線を強く反射するため、前駆体の熱変換、並びに、一軸配向膜の形成が困難である。そこで、当該年度は、ガラス側(裏面)から赤外線レーザーを照射することで、前駆体を熱転化する新たな方法を検討した。吸収スペクトル測定及び偏光顕微鏡観察によって、裏面照射した試料が熱変換し、大きなドメインを形成する様子が確認できた。また、電子線回折の結果、ガラス基板上と同様な一軸配向膜を形成していることが判明した。更に、pn接合型の有機薄膜太陽電池を作製するために、n型半導体、及び、上部電極を形成した。作製したデバイスの電流電圧特性を評価したところ、良好な太陽電池特性を示すことが分かった。変換効率(PCE)は1.10%と算出され、pn接合型の有機薄膜太陽電池としては高い値を示した。裏面照射することで透明基板上で一軸配向膜の形成が可能となり、有機薄膜太陽電池への実装にも成功した。
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