研究課題/領域番号 |
25706022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 竜太 東京大学, 物性研究所, 助教 (80546573)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マルチフェロイック / ナノ構造 / 酸化物 |
研究実績の概要 |
本研究は磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイック材料の薄膜結晶をパルスレーザー堆積法で作製し、強誘電物性を磁場で制御するデバイス、磁性を電場で制御するデバイスの作製をそれぞれ目的としている。マルチフェロイックな特性を持つ薄膜材料を作製するべく二つのアプローチを取り、実験研究を進めている。
一つ目のアプローチとしてダブルペロブスカイト構造を有する強磁性体La2NiMnO6を強誘電体化することを目的としている。この材料は酸素を介したNiとMnの超交換相互作用によって強磁性が発現することがしられている。さらに、最近の報告ではスピンとフォノンの結合が強い系として知られていて、EuTiO3薄膜結晶のように、ストレインを印加することで強誘電性が誘起することが予想される。パルスレーザー堆積方を用いてSrTiO3(001)基板上にLa2NiMnO6薄膜を作製し、引っ張り応力をLa2NiMnO6薄膜に印加した。[111]方向に結晶が引っ張られ、この方向に強誘電性を誘起することに初めて成功した。
二つ目のアプローチとして磁性を持つスピネル結晶のナノ構造を強誘電性を持つペロブスカイト薄膜の中に埋め込んだ構造を自己生成的に作製し、室温で電気磁気効果を持つ結晶を作製することを目的としている。その一環としてパルスレーザー堆積法を用いてマグネタイトのナノピラミッド構造を自己生成的に新しく作製することに成功した。この特異な成長メカニズムを利用して、室温で電気磁気効果を示すデバイスを作製することを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ダブルペロブスカイト構造を持つ強磁性体La2NiMnO6の薄膜結晶を強誘電体化することに成功した。この強誘電性は基板からのエピタキシャル歪みによって誘起される。また、一般的な強誘電体ではB-siteのイオンが強誘電性に強く影響することが知られているが、La2NiMnO6の強誘電性はA-siteのLaが変位する強誘電体であることが新しくわかった。このA-siteの変位はトラレンスファクターが1より小さく、A-siteがB-siteより小さいことに起因している。また、このような場合、オクタヘドラルが回転したり、傾くことで極性が失われる傾向が強いものの、我々の場合は3回対称性を持つRhombohedral構造にストレインが加わることで、自発分極を持った構造が安定化にすることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
強誘電性と強磁性を併せ持つマルチフェロイック材料の開発に成功した。この電気磁気効果を測定するための評価機構を新しく整え、マルチフェロイック特性を持つデバイスの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品に一部変更が出たため
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の消耗物品の購入へ利用する
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