ナノスケールのダイナミクスを非破壊・非侵襲で計測可能とするために、計測原理の理論検証と計測装置開発、および計測対象の作製と評価を実施した。 FDTDシミュレーションを実施し、近接場光を先鋭化されたプローブ先端へ光を導く「近接場-近接場結合」によるナノメートル光スポットの励起を確認した。また、プローブに用いる材質の伝導度と形状による光スポットの励起効率の検討を行い、高効率の光スポット励起と高SN比計測が可能なプローブ構造を見出した。現状、近接場励起に用いる励起光と同等の電場強度を有するナノメートル近接場光スポットを励起が可能であるとの結果を得ている。 計測装置開発を実施し、非破壊・非侵襲の光学計測で、空間分解能3.0ナノメートル測定再現性1.0ナノメートルを実験で確認した。この研究開発で培った技術を用いることにより、非破壊ナノ光計測装置として、年間の優れた技術開発100選に送られる2014 R&D100 Awardを受賞した(日立製作所 中田俊彦氏、馬場修一氏と協同受賞)。さらに、高速計測を目指して開発したプロトタイプ計測装置は、1.8フレーム毎秒の計測が可能な性能を出せるまで開発が進んだ。この計測速度は当初目的を達成する性能である。 計測対象であるマイクロメートルスケールの磁気ディスクを作製し、顕微偏光計測によって磁気ディスク内の磁化が渦構造を示すこと確認した。本磁気ディスクを用いた磁気渦構造の光制御をめざし、作製したサンプルへ高強度テラヘルツパルスを照射する実験を実施した。そして、磁気渦構造をピコ秒の時間スケールで制御できる可能性を示唆する結果を得た。 査読付論文3篇と学会発表5件(招待講演1件)、受賞1件の成果。
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