研究課題/領域番号 |
25706025
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
花田 修賢 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (20435671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多孔質形状 / 吸水性 / 選択的エッチング / 水棲微生物 / 顕微観察 / フッ素ポリマー |
研究実績の概要 |
本研究課題では、水の屈折率にほぼ等しい低屈折率ポリマーCYTOPによる細胞観察用バイオチップを作製することで、これまで得ることが不可能であった細胞の鮮明な動態遷移観察画像を取得することを目的とした。
昨年度は、確立を行ったフェムト秒レーザー3次元加工技術によりCYTOP基板内部に流体構造を作製することに成功した。しかしながら、加工技術メカニズムについては不透明な部分が多く、特に、昨年度検討した各種フッ素溶媒により、如何にアブレーションされた領域が、選択的エッチングされるかは解明していなかったことから、そのメカニズム解明を、XPSやRaman分光測定により行った。その結果、アブレーション領域内に形成されたデブリと思われる微小堆積物には、当初、予想していた化学的組成変化は見られなかった。そこで、堆積物表面に着目し、表面が多孔質形状であることから、毛細管現象により、物理的にフッ素溶媒が浸透しやすくなり、選択的エッチングを可能にする、と推測した。本推測を検討すべく、実験ではレーザー照射領域内の吸水性について測定を行い、レーザー未照射領域に比べ、レーザー照射領域は、高い吸水性を有することをつきとめた。
また、作製を行ったCYTOP製バイオチップを用いることで、従来バイオチップでは観察することができなかった水棲微生物-固体間の相互作用観察に成功し、固体近傍で一定の距離を保ちながら旋回運動する微生物の運動メカニズムについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
不透明であったエッチングメカニズムの解明は、当初予想されていたメカニズムとは異なり、他の要因である表面形状の吸水性、であることをつきとめたため。
また、従来バイオチップでは観察が不可能であった、細胞‐固体表面相互作用観察を作製したバイオチップを用いることで観察可能にし、水棲微生物の固体近傍での特異な運動メカニズム解明を検討することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、引き続き、作製したバイオチップを用いた水棲微生物の運動メカニズム解明を行う。また、作製した流体構造に、同じくフェムト秒レーザーにより作製した光導波路を集積化する技術を確立することで、流体構造内の所望する箇所に微生物を光トラップでできる機能集積型バイオチップを作製する。
さらに、本研究課題はフェムト秒レーザーを用いたバイオチップ作製であるが、産業応用を見据えた汎用レーザーによるCYTOP表面加工技術の確立についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品として使用する中で、節約して使用することができたため、予定額より少なく済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究の際に生じる急な薬品、試薬等調達に使用する予定
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