研究実績の概要 |
三ヶ年計画の最終年度にあたる今年度は, 架橋グラフェンナノリボンの統一的合成モデル化と大規模集積回路の実現に向けた研究を行い以下の成果を得た. (1)架橋グラフェンナノリボンの統一合成モデル化 前年度までの研究により, 本手法によるグラフェンナノリボンの合成において, プラズマ反応場におけるニッケルナノバー触媒への炭素の高効率供給が重要であることが判明した. またその後ニッケルナノバーが液体状となりグラフェンナノリボンが析出合成することが明らかとなっていた. 一方で, 最終的に架橋構造のグラフェンナノリボンが形成される理由に関しては未解明のままであった. これに対して, 分子動力学シュミレーション, 及び相図を用いた理論解析を行った結果, グラフェンの析出過程において, ニッケルナノバーが液体状となり, それらがプラトー―レイリー不安定性により液滴に分裂し, その後界面エネルギーの大小関係によりニッケル液滴がグラフェンナノリボン両端方向へ移動することにより, ニッケル粒子を架橋した構造のグラフェンナノリボンが合成されることが判明した. これにより, 本手法で合成されるグラフェンナノリボンの統一的合成モデルを提唱することに成功した. (2)グラフェンナノリボンの大規模集積回路形成 上記の通り, 本手法による架橋グラフェンナノリボンの合成機構が明らかになった. そこで, この情報をもとにプラズマCVD条件(プラズマ生成電力, プラズマ照射時間, ガス混合比, ガス圧力, 加熱・冷却速度等)の詳細な最適化を行った. その結果, 2x2cm角の基板上一面に1,000,000本以上の架橋グラフェンナノリボンを大規模集積化合成することに世界で初めて成功した. この成果により, 本研究で開発した架橋グラフェンナノリボンを用いた実用デバイス化の可能性が大いに高まったと言える.
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