研究実績の概要 |
高耐久性NEAフォトカソードを用いて、二光子励起過程によるスピン偏極電子線の生成を目指す。このためInGaNをフォトカソードに採用し、①二光子吸収の下、その量子効率および放出電流の励起レーザーパワー密度ならびに励起波長のスペクトルを測定する。これにより二光子励起過程由来の電子生成であることを確認する。さらに ②フォトルミネッセンス測定によりフォトカソード内部の結合状態密度や励起電子の緩和過程を測定し、円偏光度測定を介して固体内部での電子励起状態の測定を実施する。次に③エミッタンスの検討を行い、一光子励起と二光子励起の違いを検証する。これにより、非線形吸収過程により高輝度化が可能であることを実証する。本年度は下記の3点について実施した。 (1)二光子励起による放出スポットサイズの減少:1光子励起時のエミッタンスと2光子励起におけるエミッタンスの違いを評価した。これにより、二次の吸収過程に起因する放出スポットの縮小が初期エミッタンス低減に寄与されると推察された。同波長のレーザーを用いた場合、その回折限界を超える励起スポット径が実現でき、フォトカソード型電子源の新しい展開を示唆する知見を得た。 (2)PL測定による円偏光二光子励起過程における電子励起の確認:PL測定系においてパルス励起光源を円偏光にして、ルミネッセンス光の高次特性を測定した。これにより、2光子励起のみならず3次の吸収も確認される光子強度および波長があることを確認した。二次の吸収によってのみスピン偏極電子励起が可能であるため、その条件を探索し、最適な条件を見いだすことに成功した。 (3)国際的な成果発表:これまでの研究成果を電子顕微鏡関連の国際会議(2nd East-Asia Microscopy Conference, Young scientists satellite meeting in EAMC, International Symposium on EcoTopia Science 2015)にて発表した。このうち1つは招待講演である。
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