研究実績の概要 |
本年度は, 昨年度に引き続き一般化Korteweg-de Vries(KdV)方程式の解の長時間挙動について, 特に, 解の挙動を分類するという観点から研究を行った。本研究においては主に, ソリトン解が安定となる質量劣臨界の場合に, 散乱する解の集合と散乱しない解の集合との境目にある最小非散乱解とよばれる解について研究を行った。最小非散乱解は解の挙動の分類を行う上で重要な役割を果たすが, 本研究では線形化方程式の解に対する時空間評価とその時空間評価に基づく凝集コンパクト性の議論を用ることにより最小非散乱解を構成した。昨年度までの研究で構成した最小非散乱解は時間発展によるコンパクト性が期待できないが、今年度は最小化問題の設定を変えることで昨年度とは異なるプレコンパクト性を持つ最小非散乱解の存在を示した。 本年度はまた, ゲージ不変な2次の非線形項を持つ2次元Klein-Gordon方程式の散乱問題について考察した。非線形項が滑らかではないため, 具体的な解の挙動はこれまで知られていなかった。本研究では一般化KdV方程式の解の挙動を調べる際に用いた, フーリエ級数に関する手法を用いることで, ゲージ不変な2次の非線形項を持つ2次元Klein-Gordon方程式に対し解の挙動を捉えることが出来た。具体的には, 線形化方程式の解に位相を補正を施したものを漸近形として与えたとき, 時刻無限大でその関数に漸近するような非線形Klein-Gordon方程式の解を構成した。またわれわれの手法とGinibre-Ozawaによる手法を組み合わせることで3次元非線形Klein-Gordon方程式に対しても同様の結果を得ることが出来た。これらの研究は眞崎聡氏(大阪大学)との共同研究に基づく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 昨年度に引き続き一般化KdV方程式の解の長時間挙動について, 散乱する解の集合と散乱しない解の集合との境目にある元のうち, 最も重要な最小非散乱解とよばれる解を構成した。昨年度までの研究では, 時間と空間の可積分指数が等しい場合の線形化方程式の解の時空間評価をもとに解析を行っていたが, 今年度は時間と空間の可積分指数が等しくない場合の時空間評価をもとに解析することで, より少ない仮定のもと一般化KdV方程式の最小非散乱解の存在を示すことができた。また本研究で用いた手法を応用することでゲージ不変な2次の非線形項を持つ2次元Klein-Gordon方程式に対し解の挙動を捉えることが出来た。
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