研究課題/領域番号 |
25707005
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三浦 英之 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20431497)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非圧縮性流体 |
研究実績の概要 |
前川泰則氏およびChristophe Prange氏と共同で,境界がグラフで表されるn次元領域におけるStokes方程式の研究を行った.これまでの前川氏との研究では非等方的な関数空間での解析を行っていたが,解に対し境界に沿った方向で無限遠方での速い減衰の仮定をしていた.本研究では,より一般の速度場のクラスに対してレゾルベント問題の考察を行い,Stokes半群に関する評価を導出した.これは非圧縮性Navier-Stokes方程式の時間局所解の構成において重要な役割を果たすと期待できる.
前川氏と共同でn次元半空間における非圧縮性Navier-Stokes方程式の研究を行った.以前の研究でn次元ソレノイダルベクトル場全体のなす空間からn-1次元ユークリッド空間に値を取る関数全体のなす空間への同型写像を構成しているが,この写像を用いた解析により,非圧縮性Navier-Stokes方程式の速度場のエネルギーが時間変数に関して多項式減衰するための初期値の必要十分条件を与えた.これはLorenzo Brandolese氏による全空間における同方程式のエネルギー減衰の結果の拡張になっている.
またDong Li氏および米田剛氏と3次元全空間における非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の爆発速度の研究を行った. 特に解の微分に対する空間p乗可積分ノルムの爆発時刻付近での下からの評価を得た.証明は交換子評価等を用いない初等的で簡明な手法によって行われるが,David McCormick氏らの近年の結果の改良になっており,今後,より解の詳細な挙動を調べる上での基礎になると期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非圧縮性Navier-Stokes方程式の研究については,境界が非コンパクトな領域での線形問題の解析が進展している.また非線形問題の解の性質についても調べることができた. 一方全空間で定義された問題に対しては爆発時刻近傍での解の下からの評価について新しい知見を得ることができたので,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は非コンパクト領域におけるStokes方程式の解析を進めた上で,非線形問題へ応用を行う.また,爆発時刻近傍での解の挙動について,より詳細な評価を導出できないかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に長期の国外出張を予定していたが, 期間を短縮する必要があったため国外出張の旅費が予定額を下回った.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は非圧縮流体の運動を記述する方程式の解析および,調和写像熱流の漸近解析について研究を進めるため,国内外に出張し研究打ち合わせを行う.また得られた成果を研究集会などで成果報告を行い,関連研究者との議論を行う.
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