研究実績の概要 |
非圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題に関する研究を行い,一様局所型Lebesgue空間に属す初期速度場に対して時間局所的な可解性の結果を得た(前川泰則氏およびChristophe Prange氏との共同研究).一様局所型Lebesgueノルムは関数の局所的な正則性の情報を調べる際に有用であり,また空間無限遠で減衰しない解を考える上でも重要となる.一様局所型空間でのNavier-Stokes方程式の研究は全空間における初期値問題に関しては,Lemarie-Rieusset(1999)および前川-寺澤(2006)による先行研究があるが,境界をもつ領域においてはこれまでほとんど研究が行われてこなかった.本研究では特に領域が半空間の場合の問題を考察し, mild solutionと呼ばれるクラスの解の時間局所的な一意存在を証明した.証明においてはStokes半群の解析および積分方程式のDuhamel項に現れる積分作用素の解析が鍵となる.半空間においてはSolonnikov等により線形Stokes方程式の解公式が得られているが全空間の場合と比べて解表示は複雑であり,非線形項および圧力項の評価にも困難が生じる.そこで有界関数の空間でのStokes半群の研究を行ったDesch-Hieber-Pruess(2001)の研究を参考に,resolvent問題に現れる積分核の各点評価から半群の解析性等の性質を導いた.また主結果の応用として,解の爆発時刻付近における局所Lebesgueノルムの集中現象を調べることができた.
|