補償光学による高解像度惑星モニター観測システムの構築のために、惑星観測用大気ゆらぎ補償光学装置の開発研究を遂行した。本年度は、前年度に引き続き、惑星観測用多層共役補償光学システムの全体設計を進め、システムの基本構成を、地表層(高度0km)と高度2.6kmにそれぞれ共役する2枚の140素子MEMS型可変形鏡と4台の11×11素子のシャックハルトマン波面センサを用いた多層共役補償光学システムとして、全体設計を確定させた。光学系と光学機械系の詳細検討の結果、木星などの惑星表面模様を用いた相関追跡法による波面測定を行い易くするための約18×18秒角の幾分広い視野を持つ波面センサ4台にて、全体視野60秒角を4分割した分割視野内(30×30秒角)から波面測定に適した惑星表面模様像をそれぞれ選択導入して波面測定を行うことのできる設計を得ることができた。 光学系、光学機械系(レンズ・ミラー支持具、波面センサ用参照光源導入機構)や全体機械構造などの個別要素の設計をほぼ完了し、光学素子(軸外し放物面鏡、折り返し鏡、視野分割用ピラミッド型4面鏡、波面センサ用レンズ、レンズレットアレイ)と光学機械部品(ミラーホルダ、調整ステージなど)の調達および全体機械構造などの機械部品製作を行った。 140素子MEMS型可変形鏡については、入力駆動電圧に対する変形量の測定を行い、その性能を評価した。しかし、前年度における光学設計のスケジュールの遅れにより、実験室における閉ループ試験の実施までは至らなかったため、今後装置の組立・調整と制御ソフトウェア作成を進め、1年以内での実験室における閉ループ試験を目指している。その後、望遠鏡に搭載して実際の天体を用いた試験観測を行い、補正性能の測定評価を行う予定である。
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