地球型惑星は複数回の巨大衝突(ジャイアントインパクト)により質量を獲得すると考えられている。本研究では、これまで理論研究が中心だった巨大衝突の議論に対し、直接的な観測により新たな知見と制限を与えることを目的とする。高温高圧下でのみ生成されるシリカ(SiO2)を巨大衝突のトレーサーと考え、若い系外惑星から放射されるシリカフィーチャ(波長10μm)の形状と時間変化を観測することで巨大衝突の姿を探る。観測には我々が開発中の中間赤外線装置MIMIZUKUを用いる。MIMIZUKUは視野合成機能により、これまでの地上装置を圧倒する高い精度で10μm帯スペクトルを観測することができる。本研究は中間赤外線装置MIMIZUKUの開発と、それをすばる望遠鏡に取り付けて実施するシリカフィーチャの分光監視観測による観測的研究から構成される。平成27年度までにMIMIZUKUの各ユニットは完成している。研究4年目である平成28年度はMIMIZUKUの統合試験を実施した。また、不具合が明らかになったセンサ読み出し部の改修を実施した。すばる望遠鏡の利用に関する国立天文台との交渉が長引いたため、国立天文台ハワイ観測所への輸送は平成29年度にずれ込んでしまったが、同8月にハワイへ輸送する準備も完了している。現地にてMIMIZUKUの調整を実施した後、すばる望遠鏡に搭載してシリカフィーチャの分光監視観測を実施する予定である。一連の装置開発の成果は6月にイギリスで開催された国際研究会SPIEにて発表された。
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