研究課題/領域番号 |
25707012
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
西山 正吾 国立天文台, 太陽系外惑星探査プロジェクト室, 研究員 (20377948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤外線天文学 / ブラックホール |
研究概要 |
本年度は南アフリカへ2回出張し、銀河系の中心にある超巨大ブラックホールの観測を行った。また、研究代表者が行けない時期には現地にいる観測者に対し、モニター観測の依頼を続けてきた。その結果、天候や観測者の観測天体とのバッティングなども含め、おおよそ3日に1回程度のモニター観測となった。残念ながらまだブラックホールの増光現象は確認されていない。また、突発的な増光現象が起きた時に詳しい観測を行うため、口径8mのすばる望遠鏡やジェミニ望遠鏡の観測時間を確保することができた。 本年度は、研究代表者が第一著者となる査読付論文を国際学術誌に発表した。これは本研究で行われているデータ解析手法を確立するために行われてきたこれまでの研究をまとめたものであり、The Astrophysical Journal Lettersに掲載された。 次に、研究代表者が大きく寄与した研究として、ふたつの論文が査読付国際学術誌に発表された(Hatano et al, The Astronomical Journal; Yoshikawa et al, The Astrophysical Journal)。これらは銀河系中心にあるブラックホールと太陽系との間を埋め尽くす星間物質の性質について、そしてブラックホール周辺における星形成について研究したものである。本研究を深めて行くために必要な新たな知見が得られた。その他、共著者として査読付論文が2本出版された。 また、今年度は8件の学会発表を行った。うち5件が国際研究会での発表、2件が招待講演である。まだ本研究は発展段階であるため、取得されたデータを用いた関連する研究を中心に発表を行った。また本研究および本研究領域が将来的にどのように発展して行くのか、という点についても発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年初頭より、継続的な観測を南アフリカで行ってきた。研究代表者自身の観測と依頼観測とを合わせ、高頻度のモニター観測が実現されている。また他波長の研究者とも連携をとり、共同観測を計画/実行している。まず日本国内にある電波望遠鏡を用いたモニターを行っているグループと密に連絡を取り合い、情報共有をするとともに、共同で観測提案をおこなった(VLA)。また日本のVERAグループとも連携し、共同でプロポーザルを提出した。さらに日本のX線グループとも連携し、X線衛星Suzakuと南アフリカのIRSFとの同時観測も行っている。このように、本研究を提案したときよりも連携グループが大きくなり、有意義な研究が可能になりつつある。 突発的な増光現象が起きた時により詳しい観測を行うため、大きな望遠鏡の観測時間を確保する必要がある。そのための観測提案を行い、2013年は年間を通じて、2014年はすでに前半に関して、口径8mのすばる望遠鏡やジェミニ望遠鏡の観測時間を確保している。この観測提案は日本の光赤外線天文学分野では唯一のものであり、大型望遠鏡の高い競争率も考えると、この提案が受け入れられ、また継続する意義は大きい。 その一方、データ解析のためのソフトウェアには、まだ改良の余地がある。重力マイクロレンズの観測グループ、木曽シュミット望遠鏡を用いた変光星探査グループと共同で解析ソフトの作成を行っているが、観測領域の星の数が他に比べ圧倒的に多いため、ブラックホールのわずかな増光を検出するにはまだいたっていない。この点については今後も改良を続けて行く。
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今後の研究の推進方策 |
現段階ではまだ超巨大ブラックホールの増光現象は確認されていないが、平成26年度も観測を継続し、突発的な増光に対応できる体制を維持する。ガス雲は平成26年の3月頃、シュバルツシルト半径(Rs)の約1600倍の距離までブラックホールに近づくため、この時期に増光現象が起きるかもしれないと予想されていた。しかしこの距離(1600Rs)からブラックホールのごく近傍(数Rs)までガスが到達するには、それなりの時間が必要になる可能性もある。まだ詳細な計算やシミュレーションは行われていないが、1ヶ月程度で到達するかも知れないし、数年かかる可能性もある。増光現象のひとつの原因となりうるジェットの生成は、ガスがブラックホールのごく近傍まで到達してから発生すると考えられるので、増光現象はまだ待つ必要がありそうである。このような状況に対応するため、ブラックホールのモニター観測を継続して行っていく。 また引き続き、8m級の大望遠鏡をもちいた観測提案も行う。2013年にはすばる望遠鏡、2014年前半期はすばる望遠鏡とジェミニ望遠鏡を用いた観測提案が採択され、突発的な増光現象が起きれば、すぐに観測できる体制が整っている。2014年度の後半期にもすばる望遠鏡とジェミニ望遠鏡を用いた提案をすでに行った。南アフリカにおける高頻度のモニター観測プラス大望遠鏡による詳細観測、という組み合わせが行えるよう、今後も体制づくりを続ける。
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