研究課題
本研究の第1目的である、銀河系の巨大ブラックホール Sgr A* のモニター観測は順調に進んでいる。しかし、残念ながら、ガス雲落下とともに予想されていた突発現象はまだ生じていない。そのため、ブラックホール自体の研究に関する論文はまだ執筆できていない。しかしこれらの観測とデータ解析の現状について、同様のデータを用いたブラックホール周辺研究の成果も合わせて、研究会等で口頭発表を行っている。4月の「活動銀河核ワークショップ」、10月の「ブラックホール地平面勉強会」、11月の長野ブラックホール天文教育研究会、3月の「ブラックホール磁気圏研究会」などでブラックホール Sgr A* の観測に関する発表を行った。また関連研究について4件の招待講演を行っている。また本研究で得られた観測データをもとにした研究も進んでいる。本研究では Sgr A* およびその周辺領域の近赤外線偏光観測も行っており、ブラックホールだけでなく近傍の星間空間や星の研究が可能である。それらのデータを基に、The Astrophysical Journal Supplementに査読論文を発表した (T. Yoshikawa, S. Nishiyama, et al. 2014, "Young Stellar Object Search toward the Boundary of the Central Molecular Zone with Near-infrared Polarimetry")。研究会の集録としても3つの論文を発表している(S. Nishiyama, et al., Proceedings of IAU, Proceedings of Suzaku-MAXI 2004, Highlights of Astronomy)。
2: おおむね順調に進展している
2013年初頭より続けていたブラックホール Sgr A* の近赤外線モニター観測を、平成26年度も継続して行うことができた。研究代表者自身が観測に行くことはなかったが、現地の観測者の協力により、観測可能時期にまんべんなくモニター観測を行うことができた。頻度にすると3日に1回は観測できていることになる。現地の晴天率50-70%を考慮すると、十分な頻度でモニター観測を実行できたと言える。また平成26年度より、宮城教育大学の学生を研究協力者として加え、研究を進めている。2013年から始まった観測のデータ量は膨大であるが、学生と協力することにより、徐々に解析が進みつつある。よりリアルタイムでの突発現象の発見と、モニター観測によるSgr A*の明るさの上限値の詳細測定を目標にデータ解析を進めている。大望遠鏡による観測時間も引き続き確保してきた。2014年は上半期、下半期ともに8m望遠鏡すばるの観測時間を確保し、突発的な現象が起きた時には観測できるような準備を整えている。また2014年上半期は8m望遠鏡Geminiの観測時間も確保していた。他波長のグループとの連携も引き続き行っている。日本の電波望遠鏡を用いたモニター観測を行っているグループとは常に情報を共有し、突発的な現象に対応できるようにしている。ただ、残念ながら、観測したいと考えて来た突発現象は未だ発見されていない。他の波長(X線、電波)による観測でも同様の結果が得られている。そのため、突発現象の詳細観測が、研究期限内に行われるかどうかはまだ分からない。ただ、申請書にも記述したように、予想された突発現象が起きなかった時のための研究も進めている。東北大学の研究者と共同で、測定データを基にした変光天体の探査を進めている。この研究を進めることで、本来の目的が達成されなかったとしても、重要な科学的成果を挙げることは可能である。
平成27年度も引き続き、ブラックホール Sgr A* の近赤外線モニター観測を継続する。ガス雲はすでに、ブラックホールの最近点を通り過ぎているはずである。しかしそこからブラックホールの事象の地平面付近まで、物質が落下するためにどれくらいの時間がかかるのか、予想は難しい。数日で落ち込むという予想もあれば、数年かかるという予想もあった。現在、数日という予想は否定されているが、数年単位の時間をかけて落ち込むのであれば、27年度以降、それに関連した突発現象が起きる可能性がある。そのような現象を研究するため、モニター観測を継続する。モニター観測の頻度を上げるために、東北大学および宮城教育大学の学生を研究協力者として、観測を行う。27年度は4月と6月-9月にかけて観測者を南アフリカ天文台に滞在させ、観測を行う。研究代表者自身も南アフリカにおもむき、観測を行う。27年度も大望遠鏡の観測時間を確保するように申請を行う。突発現象が生じた時、大望遠鏡による詳細な観測は欠かせない。27年度はすでに7月まで、すばる望遠鏡による観測時間を確保している。また他波長の観測者との連携も継続する。特に電波観測を行う研究者との連携はここ数年安定して続いている。情報共有を続けつつ、突発的な現象に対応できるような状況を維持していく。
2014年はブラックホールによる突発現象が期待されていた時期であり、そのような現象が起きた時点で各地へ出張し、観測を行う予定であった。しかし予想とは異なり、突発現象はまだ起きていない。そのため旅費の支出が予定よりも少なくなった。
突発現象は2015年に起きる可能性があるため、前年度に使用しなかった旅費はその時に使用する。また宮城教育大学および東北大学の学生を新たな研究協力者とし、より高頻度のモニター観測を実施する。そのための旅費として、前年度使用できなかった研究費を用いる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 4件)
Astronomy and Astrophysics
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Highlights of Astronomy
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