昨年度までの開発により、ワイヤーを用いて液体キセノン中での電荷増幅による比例蛍光の発生閾値を400kV/cmであることを確認した。これに基づき、今年度は針電極で400kV/cmの電場を実現するべく、ガス中でのウニ針状電極の開発を行っているCEA SaclayのIoannis Giomatarisと研究代表者が双方に実験室を訪問して開発を行った。まず、神岡にて、先端150μmの針電極を製作し、液体キセノンへ導入し高電圧を印加する実験を行った。400kV/cmを実現できる6kVの高電圧を印加することには成功したが、フィードスルでの放電が発生し安定に測定を継続できなかった。また現状のジオメトリでは針への電子の収集効率が1%程度しかないことも理解したので、まずはSaclayにてガス中でウニ電極による電子収集の最適化を行うことにした。Saclayでは実際のXMASS検出器と同じ1mサイズの球状検出器にウニ針電極を試し、ガス中での電荷増幅と、電場の一様性の最適化を確認した。それを神岡の10cmサイズのテストベンチへスケールして導入するため、先端50μmと80μmの針電極を新たに設計、製作した。一方、テストベンチへ外部から137Csなどのガンマ線を照射した際のS1発光での検出器を理解するためにXMASSの検出器シミュレーターを応用したphoton trackingシミュレーションを行った。その結果液体キセノンの使用量を抑えるためのテフロンスペーサーに存在する空隙に存在するキセノンとのエネルギー損失が大きく、S1で光電吸収ピークが見えていないことが分かった。今後、テフロンスペーサーを改良し、50μmのウニ針電極を導入して実験を行う予定である。
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