OPERA実験は、CERNの加速器SPSを用いて作ったミューニュートリノ(νμ)ビームを730km 離れたイタリア・グランサッソ研究所に照射し、タウニュートリノ(ντ)の出現の有無を調べ、ニュートリノ振動現象を最終検証する長基線加速器ニュートリノ振動実験である。 本研究を通して、我々は計5例のタウニュートリノ反応事象を検出し(2015年)、OPERAの最大の目的であったタウニュートリノ出現によるニュートリノ振動の直接観測を信頼度5.1σという業界で"発見"と見なされるレベルで達成した。 また、タウニュートリノ反応の選別条件を緩めた新しいセレクションを適用し、さらに5例のタウニュートリノ反応候補事象を加えた。この計10例(うち背景事象推定数は2.0。新たなタウニュートリノ反応候補事象の中には、チャーム粒子を伴う反応も初めて検出した)を用いたタウニュートリノ出現によるニュートリノ振動測定から、Δm23^2 = 2.8±0.6 x 10^-3 eV^2 との値を得て測定精度の向上に成功した。 一方で、タウニュートリノ反応の背景事象となるハドロン反応の系統的な詳細研究も進め、この振動測定に対する系統誤差を30%から20%に抑制した。 以上はいずれも世界初の結果であり、現在学術論文の執筆中である。これらの成果に繋がった本研究課題代表者の解析技術開発に対して、平成26年度 日本写真学会 進歩賞「原子核写真乾板における自動飛跡認識技術の高度化研究」,OPERA実験グループに対して、第21回 日本物理学会 論文賞が授与された。 さらに、本研究を進める中で開発した新規技術の応用研究として原子核乾板を主検出器とする新しいニュートリノ実験プロジェクト(NINJA実験)を本研究者が実験代表者として立ち上げ、実際に水標的および鉄標的原子核乾板検出器をJ-PARCに設置し、ニュートリノビーム照射実験を実施した。
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