研究課題/領域番号 |
25707020
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岩田 圭弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 高速炉研究開発部門 大洗研究開発センター 高速実験炉部, 任期付研究員 (20568191)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光パラメトリック発生 / ラドン / 共鳴イオン化 / 真空紫外レーザー / 暗黒物質 / 宇宙物理 |
研究概要 |
キセノンを用いた暗黒物質探索実験では、バックグラウンド低減に向けて検出器全体から定常的に発生するラドンの連続的・選択的除去が求められている。本研究では、レーザー共鳴イオン化技術を用いたラドン除去システムの構築を目指し、ラドンの1光子共鳴励起に必要な高出力・狭線幅・波長及び出力安定性に優れたナノ秒パルス真空紫外レーザーの開発が主な目的である。また、キセノン中のラドン除去効率を評価し、XMASS実験への適用性を検証する。 平成25年度は、真空紫外レーザーの生成に必要となる波長212.6 nm紫外レーザー(パルス幅5 ns, 繰り返し10 Hz)を開発した。狭線幅・波長及び出力安定性を満たすため、共振器を組まない光パラメトリック発生(OPG)をベースとした光学系の構成とした。励起光にNd:YAG第3高調波を使用し、波長1072.8 nmに微調整した外部共振器型半導体レーザー(~30 mWの連続波)を励起光(~30 mJ/p)と重ねてBBO結晶4個(長さ20 mm及び15 mm各2個)に導入し、OPG過程により波長530.2 nmの可視光~3 mJ/pを得た。これを励起光(~100 mJ/p)と重ねてBBO結晶2個(長さ15 mmを2個)に導入し、可視光出力を~30 mJ/pまで増幅した。最後に、増幅した可視光を励起光(~70 mJ/p)と重ねてBBO結晶(長さ7 mm)に導入し、和周波発生により波長212.6 nmの紫外光~10 mJ/pを得た。ビーム径は適宜調整し、φ4.5 mm紫外光として取り出した。 可視光波長について、従来の共振器構造では得られなかったフーリエ限界程度の線幅及びドリフトの無い安定性が確認され、紫外光についても同様な狭線幅・波長安定性が達成できたと考えられる。紫外光出力について、共振器構造並みの出力が得られ、波長に連動する形で出力安定性も向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は3年間の研究計画の初年度であり、共振器を組まない光パラメトリック発生(OPG)をベースとした光学系の開発、及び波長・出力安定性の向上が主な目的である。波長212.6 nm紫外レーザーの開発において、一方通行のOPG光学系を構成することで共振器構造並みの紫外光出力を維持しつつ、波長及び出力の安定性向上を確認した。真空紫外レーザーの生成には波長396.8 nmレーザーも必要であり開発を次年度に実施することとしたが、本研究の重要な要素であるOPG光学系の構築及び性能確認が達成されたことから、当初の計画に沿っておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、(i)OPG光学系をベースとした波長396.8 nmレーザーの開発、(ii)Kr/Xe混合ガスセルを用いた共鳴四波混合による波長145.2 nm真空紫外レーザーの開発、(iii)空気中のラドンを用いたラドン共鳴イオン化観測の3点を主に実施する。また、平成27年度に予定している電場除去システムの構築に向けて、陽イオンのドリフトに必要な電場強度等の基礎実験についても始めていく計画を立てている。 これまでに従来の共振器構造から生成したレーザーを用いて共鳴四波混合の事象を確認した実績があること、及び平成25年度にOPG光学系を構築し性能を確認したことから、(i)及び(ii)は特に問題なく実施可能と考えられる。(iii)については、共鳴イオン化信号を観測しやすくするため必要に応じて活性炭濃縮を考えているが、濃縮技術は確立されており当初の計画に沿って滞りなく進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で予定していた、光パラメトリック発生(OPG)をベースとした光学系による波長396.8 nmレーザーの生成を次年度に実施することとしたため。 OPG光学系による波長396.8 nmレーザーの生成については平成26年度に実施する計画を立てており、必要な物品費等を次年度使用額から支出する予定である。 平成26年度分として請求した研究費については、当初の研究計画に従って共鳴四波混合による真空紫外レーザーの開発及びラドン共鳴イオン化の観測に必要となる物品費等に充てる予定である。
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