研究課題/領域番号 |
25707025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 靖雄 東京大学, 物性研究所, 助教 (10589790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 走査トンネル顕微鏡 / 重い電子系超伝導 / 超低温 / 強磁場 |
研究実績の概要 |
重い電子系超伝導体CeCoIn5の超低温・強磁場で現れる新たな超伝導相では、そのクーパーペアが有限の運動量を持ち、超伝導特性が空間的に変調するFFLO超伝導が実現していると考えられている。驚くべきことに、この相では磁場によって誘起された磁気秩序が、超伝導と共存していることが実験的・理論的に示唆されている。しかし、それらの実空間観察はいまだ実現されておらず、走査トンネル顕微鏡(STM/S)がその結論を与えるのではないかと期待されている。そこで、超低温・強磁場中で動作するSTM/Sおよびスピン偏極STMを開発し、FFLO超伝導は本当に実現しているのかを明らかにし、さらに磁気秩序との共存関係を明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は現有の超低温STMを、本研究課題の目的に沿って改良を行い、CeCoIn5清浄表面を得るために、超高真空チャンバー内での劈開機構を作成し、室温でSTMによる評価を行うことを予定していた。 現在までのところ、超低温STMの改良に関しては、希釈冷凍機の冷却テストが終了し、探針・サンプルの超低温における交換機構、段階的な予備冷却機構、および強磁場・超低温STMのデザインがほぼ完了し、発注の準備を行っている。超伝導マグネットの導入に関しては、マグネットの設計を完了し、平成26年度に納入される予定である。また、CeCoIn5のへき開テストおよび予備実験として、低温400 mK、強磁場6 TまでのSTM/STS測定を行った。その結果、清浄表面の観察に成功し、またトンネルスペクトル測定による超伝導ギャップの観察、更にはこれまで報告されていなかったCeIn面におけるCe原子の可視化に成功し、さらにCeCoIn5の持つマルチギャップ超伝導体の特性から予想される超伝導状態密度の空間変調の観察に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現有の希釈冷凍機の故障のために、装置の開発に遅延が生じてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在発注の準備を進めているSTMのテストを室温、超低温で行い、さらに秋に導入予定の超伝導マグネットを使った強磁場中での測定と段階的に行う予定である。また、現有の装置を用いた様々な重い電子系試料の測定を行う予定にしており、現段階ではCdをドープしたCeCoIn5とCeRhIn5のスピン偏極STM実験を予定しており、将来超低温・強磁場STMが完成した際の測定候補物質の基礎データの収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年9月、希釈冷凍機によるサンプルのテストの際、調査目標のFFLO相が存在する300mK以下に到達するには現在の冷凍機の性能では不十分であると判明したため、冷凍機の大規模な改造を行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
14 Tの超伝導電磁石を購入する。
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