研究課題
重い電子系超伝導体CeCoIn5を超高真空中で、ab面に沿って劈開し、3He冷凍機ベースのSTMを用いて観察を行った。CeIn面でのSTM測定において、試料ー探針間距離を通常より極端に小さくした結果、これまでの報告では見られていなかったCe原子の可視化に成功した。探針が遠い時に4p軌道に価電子を持つInのみが観察され、探針を近づけると5d軌道に価電子を持つCe原子が見えるということから考えると、この観察はSTMの軌道選択性によるものであると考えられる。一方、Co面で同様な測定を行ったところ、Coの原子像がダンベル状に変化し、そのダンベルが原子サイト間で交互に向きを変えることが明らかになった。Co原子は、4s軌道と3d軌道が価電子を持つことから、Co原子の形状の変化は、探針を近づけることで、3d軌道を観察した結果であると考えられる。この実験結果を説明するために、第一原理計算を行ったところ、表面で増強されたオンサイトクーロン相互作用によって、バルクでは縮退しているdxzとdyz軌道の縮退が解け、表面近傍でのみ軌道秩序が起こる可能性が示唆された。更に計算結果を元に、探針ー試料間距離依存のSTM像をシミュレートした結果、実験結果を良く再現することが明らかになった。表面で起こる軌道秩序という新しい現象を観察しただけでなく、軌道秩序の実空間観察に成功した初めての成果である。また、4He冷凍機ベースのSTMを用いて、W(110)上のMn薄膜の磁性をスピン偏極STMを用いて調べた。その結果、第一層、第二層で報告されていたスピンスパイラルがどちらもカイラリティを有し、更にそのスピンの回転方向を決める界面ジャロシンスキー守屋(DM)相互作用の符号が同じであることを明らかにした。界面でのDM相互作用の特性が基板によって決まるという説を強くサポートする結果となった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Rev. B, Rapid communications.
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