植物及び細菌類の光合成器官は、自然が創造した地上で最も光エネルギー変換効率の良いナノバイオデバイスである。このような機能の発現には、光合成器官に含まれる色素分子群及び周辺タンパク質の最適化された空間配列及び、電子・振動状態の構造が重要な役割を果たすため、光合成機能の全容解明には、これらの因子を厳密に理解することが要求される。本申請では、光合成初期過程であるアンテナ系における色素分子間励起エネルギー移動を、極超短光パルスにより励起されたコヒーレント分子振動を介して観測される色素分子間相互作用の時間発展の観測という観点から明らかにすることを目的とした。 平成28年度は、研究代表者の異動があったため、上半期は実験設備の移設・再立ち上げを行った。上半期では、100フェムト秒チタンサファイア再生増幅器を励起光源として中空糸ファイバー光パルス圧縮器を用いたところ、パルスエネルギー0.6mJ/pulse、パルス幅8fsの高ピーク強度光パルスが得られた。このような極超短光パルスのパルス診断計測系を構築するとともに、光合成系における色素分子間相互作用の時間発展を観測するためのコヒーレント四光波混合計測装置の構築を行った。また、前年度までに得られた研究結果の学術論文への投稿を行った。
|