研究課題
若手研究(A)
本研究では、音波によるスピン流生成現象「音響スピンポンプ効果」を体系化することで、格子ダイナミクスに基づく新しいスピン流物理を開拓することを目的としている。音響スピンポンプ効果に関する平成25年度の主な成果は、以下の2点である。(1)音響スピンポンプ効果の純粋測定技術の確立: 従来の音響スピンポンプ効果の測定手法では、音波生成源として用いている圧電素子の共振時の発熱により、熱由来の信号(スピンゼーベック効果)が音波誘起スピン流による信号に重畳してしまっていた。そこで本研究では、温度勾配分布を制御しながら音波誘起スピン流を観測する新しい測定手法を提案し、Pt/YIG/PZT接合を用いてそれを実証した。今回確立した実験手法により、熱効果による寄与を排除した音響スピンポンプ効果の純粋測定、及び音波誘起スピン流の定量評価が可能になった(Solid State Communications誌に論文掲載決定)。(2)音響スピンポンプ効果の交流成分測定・時間分解測定: 格子ダイナミクス-スピン流相互作用の物理を解明するためには、これまで行ってきた直流スピン流の定常測定に加えて、音響スピンポンプ効果の交流成分測定・時間分解測定を行うことが不可欠である。本年度は、これらの測定を行うための実験系を構築し、動作確認を行った。また、磁性絶縁体におけるスピン流-電流-熱流相関物性やスピンゼーベック効果についても詳細に研究し、音波誘起スピン流の系統的な測定を進める上での重要な知見や技術が得られた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の成果により、音響スピンポンプ効果を体系的かつ定量的に研究するための土台が整い、研究を軌道に乗せることができた。現在はPt/YIG/PZT接合に焦点を絞って研究しているが、当初計画の一つである物質依存性測定のための準備も整っており、順次測定を開始する。
平成26年度は、これまでに得られた知見・ノウハウ・実験設備を利用することで、音響スピンポンプ効果の交流成分測定・時間分解測定を中心とした系統的な実験を進め、その微視的メカニズムの解明を目指す。
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