研究課題
音波によるスピン流生成現象である音響スピンポンプ効果の時間分解測定を行い、音波誘起スピン流と温度勾配誘起スピン流(スピンゼーベック効果)が異なる時間スケールで発現することを見出した。圧電素子の発熱によって生成されるスピン流は実験系の熱容量により決定される秒スケールの時定数で定常状態に達するが、音響スピンポンプ効果によって生成されるスピン流は遥かに早い時間スケールで生じていることを示した。本実験結果と昨年度報告した成果(Solid State Commun. 198, 26 (2014))により、過渡状態・定常状態の双方において、音響スピンポンプ効果とスピンゼーベック効果の寄与を定量分離・評価する実験手法を確立した。マイクロ~ナノ秒スケールにおける音響スピンポンプ効果の測定系も構築しており、予備実験とノイズ評価を行った。これを用いて今後スピン流の高速応答物性を系統的に測定することで、音響スピンポンプ効果の微視的メカニズムの解明に繋がると考えている。さらに本年度は、Pt/YIG接合を用いてスピンゼーベック効果とマイクロ波誘起スピンポンプを同時測定することで、Pt層を加熱した場合のスピンゼーベック効果とマイクロ波誘起スピンポンプは逆符号のスピン流を生成していることを明らかにした(J. Phys. D: Appl. Phys. 48, 025001 (2015))。本実験結果をベースに、外部入力によって誘起されたマグノン-電子間の有効温度差とスピン流の符号の関係性に関して詳細な検討を行った。スピンゼーベック効果と音響スピンポンプ効果の発現機構は密接に関連しており、以上の成果はPt/YIG系で発現する熱・音波・マイクロ波・光による各種スピン流生成現象を統合的に理解するための重要な指針を与えるものである。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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