研究実績の概要 |
2012年に発見したBiS2系超伝導体の超伝導機構解明に向けた物質開発および物性研究を行った.主な新物質(新組成)として,RE(O,F)BiS2(REは希土類元素でLa, Ce, Pr, Nd, Sm, Biの挿入に成功),EuFBiS2,REO0.5F0.5Bi(S,Se)2の多結晶試料および単結晶試料の合成に成功した.放射光を用いた結晶構造解析や強磁場,高圧,低温の多重極限下での電気抵抗率,磁化率,比熱などの評価から,以下の重要な情報を得ることができた.(1)超伝導特性と局所構造は強く相関している.(2)面内の化学圧力を上昇させることで超伝導が発現し,転移温度も上昇する.(3)超伝導の対称性は異方的なs波である可能性が高い.(4)低キャリア超伝導が共通の性質である.(5)ブロック層と超伝導相関の相関が超伝導および磁性の発現に重要な役割を果たす.以上の結果から多様なBiS2系超伝導体の物質開発に成功し,結晶構造および超伝導特性の制御に成功した.また,超伝導機構解明に向けた重要な情報を得ることができた. 本研究では,BiS2系層状化合物の半導体的性質に着目し,熱電変換材料としての可能性を見出すことに成功した.LaOBiS2にSeを置換することで,LaOBiSSeは金属的な電気伝導度と高いゼーベック係数を併せ持ち,さらに低い熱伝導度を示す新しい熱電変換材料であることを見出した.その性質は400℃において無次元性能指数ZT = 0.36である. また,新物質探索にも力を入れた.高圧合成法を用いることで,トポロジカル結晶絶縁体のSnTeにAgを置換することに成功し,超伝導体Sn1-xAgxTeを合成することに成功した.
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