本年度は、研究室立ち上げに伴い、本研究の遂行に必要な設備を早急に整えたうえで、下記成果を達成した。 (1)界面ゆらぎの特異な時間相関解析(慶応大・秋元琢磨氏と共同研究)。液晶乱流実験の界面ゆらぎや関連する数値模型において、弱いエルゴード性の破れに関わる一部性質が更新過程で再現できることを前年度示したが、27年度は再現できる性質・できない性質の分類と界面形状依存性を明らかにした。これは界面ゆらぎと弱いエルゴード性の破れという、統計物理学の2テーマを結びつける画期的なものである。本成果は国内外の研究会で発表し、論文を投稿した。 (2)界面ゆらぎの局所統計量の解析(Columbia大・Halpin-Healy氏と共同研究)。通常、界面のスケーリング則は、界面全体に渡って計測したゆらぎ振幅に基づいて研究される。それに対し、本研究では、一部領域に限って計測したゆらぎ振幅や極値が示す統計則に着目し、それがKPZ普遍クラスと比較可能なことを示すとともに、液晶乱流実験がKPZクラスであることを追認した。本成果は論文として出版した。 (3)曲率制御した初期条件のもとでの界面ゆらぎ測定(大学院生と協力)。KPZの円形・平面サブクラス間の関係を明らかにするため、曲率制御した初期条件のもとで界面ゆらぎを実験的・数値的に測定した。結果、数値的には、外向きに成長する界面では円形・平面サブクラスのクロスオーバーが起こり、内向きに成長する界面では平面サブクラスが出現することを発見した。実験的には本シナリオ検証のための精度改良を行った。本成果は国内外の研究会で発表した。 (4)境界条件のもとでの界面ゆらぎ測定(大学院生と協力)。KPZの半空間問題を実験的に実現すべく、フォトリソグラフィ技術を用いて、二領域に異なる電圧を印加できる電気対流系を構築した。これを用いて界面を生成し、二領域の境界付近の界面形状とゆらぎの性質を明らかにした。
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